抹茶ラテを出している店では、「エスプレッソを足せますか」と頼まれることがあります。抹茶ラテにエスプレッソを重ねたダーティー抹茶は、緑とこげ茶の層が見えるドリンクとして、コーヒーの会社や機器のメーカーも公式レシピを出しています。この記事では、公式レシピの配合と注ぐ順番を比べ、層の作り方、1杯のカフェイン、原価、メニューにするときの名前と表示までを、カフェで出す前提で見ていきます。
ダーティー抹茶とは
ダーティー抹茶(Dirty Matcha)は、抹茶ラテにエスプレッソを足した飲み物です。スターバックスは同じ組み合わせを「Espresso & Matcha Fusion」の名前で出しています。
名前の由来とほかの呼び名
ドイツのコーヒー会社Dallmayrは、エスプレッソが抹茶の明るい緑を暗くし、層のある見た目になることが名前の由来だと説明しています。米国の業界誌Barista Magazineは、ふつうはアイスの抹茶ラテにダブルのエスプレッソをのせた飲み物で、「camo(迷彩)」や「swamp(沼)」ラテと呼ばれることもあると紹介しています。
京都のコーヒーの会社Kurasuは、抹茶ラテにエスプレッソを1ショット足す「Dirty Matcha」が自社のカフェで人気のカスタムだと書いています。スターバックス豪州は、自社のEspresso Roast(エスプレッソ用の豆)と抹茶の粉とミルクを合わせた、層のある飲み物として紹介しています。スターバックスのインドネシアのサイトにはアイスのIced Espresso & Matcha Fusionがあり、ホットとアイスの両方で楽しめるとしています。
「matcha espresso」は別の飲み物のこともある
英語の「matcha espresso」は、コーヒーを使わない濃い抹茶を指すこともあります。抹茶を売るMatcha.comは、抹茶小さじ1/2を湯2オンス(約60ml)で溶いた、エスプレッソのように少量で濃い抹茶をこの名前で紹介しています。抹茶は、碾茶(てんちゃ:覆いをかけて育て、揉まずに乾かした茶葉)を細かい粉にしたものです。抹茶ラテそのものの作り方は、ホット抹茶ラテの作り方とアイス抹茶ラテの作り方にまとめています。
公式レシピの配合を比べる
公式レシピでは、抹茶は小さじ1(約2g)、エスプレッソはシングルかダブル、ミルクは100〜180ml前後が中心です。違いが大きいのは、エスプレッソの量と、どの液から注ぐかの順番です。
8つの公式情報の比較
コーヒー機器のメーカー(Breville)、コーヒーの会社(Dallmayr・Kurasu・スターバックス)、抹茶を売る会社(HEALTHBAR・Aprika Matcha)、シロップのメーカー(Monin)が公開しているレシピと商品の説明を並べました。
| 出典 | 抹茶 | 溶く湯 | エスプレッソ | ミルク | 甘味 | 注ぐ順番(下から) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Breville(ホット) | 小さじ1 | 熱湯 大さじ1 | ダブル | スチームミルク(量の記載なし) | バニラシロップ 小さじ2 | 抹茶とシロップ→エスプレッソ→ミルク |
| Breville(アイス) | 小さじ1 | 熱湯 大さじ1(冷ます) | 冷たいダブル | 牛乳 120ml | バニラシロップ 20ml | 氷・エスプレッソ・シロップ→ミルクと抹茶 |
| Dallmayr(アイス) | 点てた抹茶 150ml(粉の量は記載なし) | 湯(量の記載なし) | ダブル | 100ml | 好みでバニラシロップ | 氷・冷たいミルク→抹茶→エスプレッソ |
| HEALTHBAR | 小さじ1 | 約80℃ 60ml | 約30ml | 植物性ミルク 150ml | 好みでアガベか蜂蜜 小さじ1〜2 | 抹茶とミルク→エスプレッソ |
| Aprika Matcha | 小さじ1 | 約80℃ 2オンス(約60ml) | 1オンス(約30ml) | 6オンス(約180ml) | 好みで | ミルク→エスプレッソ→抹茶(逆でも、混ぜてもよい) |
| Kurasu | 砂糖入りの抹茶 12.5g | 12.5g | 1ショット | 150g(ホットのラテ) | 抹茶に砂糖が入っている | 記載なし |
| スターバックス豪州・インドネシア | 量の記載なし(抹茶の粉) | ― | Espresso Roast | ミルク | ― | 層のある飲み物と説明 |
| Monin | 抹茶の濃縮液 30ml | ― | 1ショット | 記載あり(単位なし) | シナモンロール風味のシロップ 30ml | 氷とブレンダーで混ぜる(層なし) |
表から分かること
抹茶の量は小さじ1前後のレシピが多く、ふつうの抹茶ラテと大きく変わりません。京都の一保堂茶舗は、抹茶2gを「小さじすり切り1」としています。抹茶の粉は詰め方で重さが変わるので、店で決めるときははかりで量ります。エスプレッソは、HEALTHBARとAprika Matchaがシングル(約30ml)、BrevilleとDallmayrがダブルです。甘味は、Breville(ホット・アイス)とDallmayrの3つがバニラシロップを使っています。
ここからは編集部の考え方です。店で出すなら、いま出している抹茶ラテの配合をそのまま使い、エスプレッソをシングルにするかダブルにするかだけを決めると、仕込みを増やさずに始められます。ダブルにするとコーヒーの味が強くなるため、抹茶の味が残るかを店のエスプレッソで飲み比べてから決めます。
層の作り方と注ぐ順番
公式レシピには、エスプレッソを一番上にのせる作り方と、一番下に入れる作り方の2通りがあります。どちらも、先にグラスに入れた液の上に、後の液をゆっくり注ぎます。
水の重さは温度と溶けた物で変わる
米国地質調査所(USGS)によると、水の密度(同じ量あたりの重さ)は温度と、水に溶けている物の量で変わります。1cm³あたりの水の密度は、4℃で1.00000g、60℃で0.98338g、100℃で0.95865gで、温かいほど軽くなります。また、物を多く溶かすほど水は重くなるとしています。ただし、これは水の値で、ミルクやエスプレッソそのものを測った値ではありません。
公式レシピの2通りの順番
Dallmayrは、氷と冷たいミルクをグラスに入れ、点てた抹茶をゆっくり注ぎ、最後にダブルのエスプレッソを静かにのせます。Dallmayrは、抹茶とエスプレッソをスプーンの背に当てて注ぐと、層がきれいになるとしています。HEALTHBARも、抹茶とミルクの上にエスプレッソをゆっくり注ぎます。
Brevilleのアイスは逆の順番です。氷を入れたグラスに冷たいエスプレッソとバニラシロップを注ぎ、その上にミルクと、湯で溶いて冷ました抹茶をのせます。
出典: Breville「Vanilla Dirty Iced Matcha」 https://www.breville.com/inspiration/en-au/recipes/coffee-espresso/vanilla-dirty-iced-matcha
店で順番を決める(編集部の考え方)
エスプレッソを上にすると、カウンターで最後にエスプレッソを注ぐ動きを見せられ、注文を受けてから淹れたてをのせられます。エスプレッソを下にすると、緑の層が一番上に来て、抹茶のドリンクとして見えます。USGSの説明に合わせるなら、甘味は下にしたい液に溶かし、下の液は冷たくしておきます。層のまま飲むと最初はエスプレッソか抹茶だけの味になるため、ストローやマドラーを添えて混ぜてもらう出し方を勧めます。抹茶が液体の中で沈む理由は、抹茶レモネード・トニック・ソーダの作り方にまとめています。
アイスとホットの作り方
アイスは層を見せる飲み物として、ホットはミルクの泡の下にエスプレッソを重ねる飲み物として作ります。どちらも、抹茶は先に少量の湯でダマなく溶いておきます。
アイス
Dallmayrの順番をもとにした、エスプレッソを上にする手順の例です。
- 抹茶約2gをふるい、約80℃の湯で溶く(甘味を入れるならここで溶かす)
- グラスに氷を入れ、冷たいミルクを注ぐ
- 溶いた抹茶を、スプーンの背に当ててゆっくり注ぐ
- 淹れたエスプレッソを、同じようにゆっくりのせる
HEALTHBARは、アイスでは冷たいミルクを使い、ミルクを泡立てなくても作れるとしています。抹茶を冷たいミルクの中でダマにしない溶かし方は、アイス抹茶ラテの作り方にまとめています。
ホット
Brevilleのホットは、カップに抹茶と熱湯を入れて溶き、バニラシロップを加えます。そのカップをエスプレッソマシンの抽出口の下に置いてエスプレッソを直接落とし、最後にスチームミルクをのせます。スターバックス豪州のホットのEspresso & Matcha Fusionも、層のある飲み物として紹介されています。ミルクの温め方と泡立ての目安はホット抹茶ラテの作り方に、植物性ミルクの選び方はオーツミルクの抹茶ラテにあります。
1杯のカフェイン
ダーティー抹茶のカフェインは、抹茶のグラム数×32mgと、エスプレッソのグラム数×2.12mgを足して計算できます。抹茶2gにダブルのエスプレッソを足すと、約190mg(計算)になります。
配合ごとの計算値
日本食品標準成分表(文部科学省)では、抹茶のカフェインは100gあたり3.2gで、1gあたり32mgです。米国農務省(USDA)の食品成分データベースFoodData Centralでは、店で淹れたエスプレッソのカフェインは100gあたり212mgで、1液量オンスは29.6gです。
| 配合 | 抹茶 | エスプレッソ | 合計(計算) |
|---|---|---|---|
| 抹茶2g+シングル | 64mg | 1液量オンス(29.6g)で約63mg | 約127mg |
| 抹茶2g+ダブル | 64mg | 2液量オンス(59.2g)で約126mg | 約190mg |
| 抹茶3g+ダブル | 96mg | 2液量オンス(59.2g)で約126mg | 約222mg |
シングルを1液量オンス、ダブルを2液量オンスとして計算しました。公式レシピの多くはダブルの量をmlで書いていないため、この量は編集部の仮定です。エスプレッソのカフェインは、豆の種類と1ショットに使う豆の量で変わります。上の表は成分表とUSDAの値から出した目安で、店で淹れた1杯を測った値ではありません。抹茶2gだけのラテ(64mg)にダブルを足すと、カフェインは約3倍になります(計算)。
スターバックスの公表値
スターバックス豪州は、ホットのEspresso & Matcha Fusionのカフェインを、Short(237ml)とTall(354ml)で150mg、Grande(473ml)で260mg、Venti(591ml)で300mgとしています。標準のレシピで計算した概算の値です。
出典: Starbucks Australia「Espresso & Matcha Fusion」 https://www.starbucks.com.au/product/espresso-matcha-fusion/
抹茶ラテやコーヒーとの比べ方、各国の公的機関が示す1日の目安は、抹茶のカフェインにまとめています。
抹茶とコーヒー・甘味の選び方
合わせる抹茶の等級は、会社によって推すものが違います。エスプレッソとミルクに負けない抹茶の量と等級を、店の豆で作って確かめます。
抹茶の等級
HEALTHBARはセレモニアル(茶会でお湯だけで点てて飲む用として売られる等級)の抹茶を使い、エスプレッソと合わせても抹茶の味が残るとしています。Aprika Matchaは、カリナリー(料理用)かカフェ向けの等級を使うとしています。Barista Magazineの筆者は、できればセレモニアルを使うことを勧めています。
ここからは編集部の考え方です。エスプレッソと合わせると、抹茶の香りは隠れやすくなります。そのため、ストレートで飲む抹茶ほど高い等級でなくても、ラテ向けの等級で量をそろえれば味は出せます。等級の違いは抹茶のグレードの違いに、ラテに向く等級の選び方はカフェの抹茶ラテに使う抹茶の選び方にまとめています。
コーヒー豆と甘味
Barista Magazineの筆者は、浅煎りで果実のような味のコーヒー(たとえばエチオピアのシングルオリジン(一つの産地の豆)のエスプレッソ)が抹茶に合うと書き、深すぎる・強すぎるエスプレッソで抹茶の繊細な味を覆わないようにとしています。Dallmayrは、自社のコーヒー豆を例に挙げています。
甘味は、BrevilleとDallmayrがバニラシロップ、Moninがシナモンロール風味のシロップ、HEALTHBARがアガベシロップか蜂蜜です。Barista Magazineの筆者は、多くの店が軽い甘味を足し、バニラシロップが合うとしています。抹茶を砂糖水に溶かしたシロップを使う方法は、抹茶シロップの作り方にまとめています。
1杯の原価
ダーティー抹茶の材料費は、抹茶ラテの材料費に、エスプレッソ1ショット分のコーヒー豆代を足して出します。抹茶の量を変えなければ、増えるのは豆代だけです。
計算の式
1杯の材料費は、次の4つを足したものです。
- 抹茶代:1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 1杯に使うグラム数
- コーヒー豆代:1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 1ショットに使う豆のグラム数 × ショット数
- ミルクと甘味:1杯に使う量 × 1mlまたは1gあたりの値段
- 氷、カップ、ふた、ストロー
抹茶の1kgの値段から1杯の原価に直す方法は、抹茶の値段はどう決まるのかにまとめています。
値段の付け方(編集部の考え方)
エスプレッソを足すメニューは、抹茶ラテの売価に、エスプレッソのショットを追加するときの店の料金を足すと、客に説明しやすくなります。シングルとダブルを選べるようにするなら、ショット数ごとに豆代を計算しておきます。
メニューにするときの名前と表示
メニュー名には、コーヒーが入っていることが分かる言葉を入れます。シンガポールでは、飲食店で作る飲み物にも糖分と飽和脂肪の表示の決まりがあります。
名前の付け方
使われている名前は、「Dirty Matcha」(Breville・Kurasu・Dallmayr)と「Espresso & Matcha Fusion」(スターバックス)です。前に見たとおり、「matcha espresso」はコーヒーを使わない濃い抹茶を指すこともあります。編集部では、「Dirty Matcha (matcha latte + espresso)」のように、名前の横に中身を書く方法を勧めます。カフェインを控えている客が、名前だけで抹茶ラテと取り違えないようにするためです。
糖分の表示とアレルゲン
シンガポール保健促進局(HPB)によると、2023年12月30日から、飲食店などで作る飲み物も、糖分と飽和脂肪の量で等級を付ける「Nutri-Grade」の対象になりました。等級がCかDの飲み物には表示が必要です。年商100万シンガポールドル以下で、10店未満で売る小規模な事業者には、当面この表示を求めない措置があり、HPBは見直していくとしています。シロップやミルクの量で糖分と飽和脂肪の量が変わるため、配合ごとに等級を確かめます。詳しい決まりはストロベリー抹茶ラテの作り方にまとめています。
スターバックス豪州は、商品ページで、設備を共用しているためアレルゲンが含まれないことは保証できないと書いています。ダーティー抹茶はミルクを使い、植物性ミルクに変える客もいるため、ミルクのピッチャーを分けるかどうかと、その表示を店で決めておきます。
参考にした情報
- Breville「Dirty Matcha」 https://www.breville.com/inspiration/en-us/recipes/coffee-espresso/dirty-matcha
- Breville「Vanilla Dirty Iced Matcha」 https://www.breville.com/inspiration/en-au/recipes/coffee-espresso/vanilla-dirty-iced-matcha
- Dallmayr「Dirty Matcha Latte」 https://www.dallmayr.com/deen/academy/magazine/dirty-matcha-latte/
- Kurasu「Matcha Kurasu Blend (With Sugar)」 https://kurasu.kyoto/products/gl-matcha-kurasu-blend-with-sugar
- Starbucks Australia「Espresso & Matcha Fusion」 https://www.starbucks.com.au/product/espresso-matcha-fusion/
- Starbucks Indonesia「Iced Espresso & Matcha Fusion」 https://www.starbucks.co.id/menu/beverage-list/espresso-beverages/iced-espresso-matcha-fusion
- HEALTHBAR「Dirty matcha」 https://health-bar.com/en-us/blogs/recipes/dirty-matcha
- Aprika Matcha「Dirty Matcha Latte (Matcha & Espresso)」 https://aprikamatcha.com/blogs/tea-recipes/dirty-matcha-latte-matcha-espresso
- Monin「dirty dirty matcha」 https://monin.ca/products/dirty-dirty-matcha
- Matcha.com「Matcha Espresso」 https://matcha.com/blogs/recipes/matcha-espresso
- 一保堂茶舗「Usucha (Classic Matcha)」 https://ippodotea.com/blogs/recipes-to-brew-japanese-tea/usucha-thin-matcha
- Barista Magazine「Dirty Matcha: Yes or No? Dissecting the Trending Beverage」(2023年10月10日) https://www.baristamagazine.com/dirty-matchas-yes-or-no-dissecting-the-trending-beverage/
- 文部科学省 食品成分データベース「抹茶 茶」(食品番号16035) https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=16_16035_7
- USDA FoodData Central「Beverages, coffee, brewed, espresso, restaurant-prepared」(SR Legacy, FDC ID 171891) https://fdc.nal.usda.gov/food-details/171891/nutrients
- U.S. Geological Survey「Water Density」 https://www.usgs.gov/water-science-school/science/water-density
- シンガポール保健促進局(HPB)「Measures for Nutri-Grade」 https://hpb.gov.sg/healthy-living/food-beverage/nutri-grade
























































































