抹茶も煎茶も、同じ茶の木(チャノキ)の葉から作る緑茶です。それでも、色も味も値段も大きく違います。違いは、摘む前に茶園を覆うか、摘んだ葉を揉むか、粉ごと飲むかの3つから生まれます。日本の公的な成分表と統計で、成分と値段がどれだけ違うのかを確かめると、カフェのメニューでどちらをどう使うかも決めやすくなります。
抹茶と緑茶の違いとは
抹茶は緑茶の一種で、煎茶とは育て方・作り方・飲み方が違うお茶です。緑茶は、摘んだ茶葉を蒸すなどして葉の中の酵素の働きを止めたお茶の総称で、抹茶も煎茶もそこに入ります。
抹茶は緑茶に入る
日本茶業中央会の「緑茶の表示基準」(業界の自主基準、2026年7月10日最終改正)は、緑茶を、茶葉を蒸したり釜で炒ったりして葉の中の酵素の働きを止め、飲めるように作ったものとしています。この基準の名称の表に、煎茶・玉露・抹茶・粉末茶などが並んでいます。
文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(以下、成分表)も、抹茶とせん茶を同じ「緑茶類」に入れています。抹茶の英名は「Green tea/“Maccha”」です。
比べる相手は煎茶
日本で最も多く飲まれている緑茶は煎茶です。農林水産省は煎茶を「最も一般に飲まれるお茶」としていて、2025年産の荒茶(あらちゃ:仕上げる前のお茶)の48.1%が煎茶でした。抹茶の原料の碾茶(てんちゃ)は8.6%です。
この記事では、抹茶と煎茶を比べます。違いをまとめると次のとおりです。
| 抹茶 | 煎茶 | |
|---|---|---|
| 育て方 | 摘む前に2〜3週間ほど茶園を覆う | 覆わずに日光に当てて育てる |
| 作り方 | 蒸して、揉まずに乾かした碾茶を臼で挽く | 蒸して、揉みながら乾かす |
| 飲み方 | 粉をお湯に溶かし、葉ごと飲む | 茶葉にお湯を注ぎ、出たお茶だけを飲む |
| 1回に使う量 | 約2g(茶碗1杯、お湯70mL) | 約10g(急須1回分を数杯に注ぎ分ける) |
| 2025年産の荒茶の値段(全茶期平均) | 碾茶 8,562円/kg | 1,746円/kg |
使う量は京都府茶業研究所の入れ方、値段は農林水産省の資料(全国茶生産団体連合会調べ)によります。
海外で「green tea」として売られている茶葉には、中国の緑茶もあります。成分表によると、日本の緑茶の大半は蒸して作る一方、中国の緑茶はほとんどが釜で炒って作る「かまいり茶」です。
育て方の違い:覆って育てるか、日光に当てるか
抹茶の原料の碾茶は、摘む前に茶園を2〜3週間ほど覆って日光をさえぎって育てます。煎茶は覆わずに育てます。この差が、味と色の違いのもとになります。
碾茶は覆って育てる
農林水産省によると、碾茶は、摘む前に棚などを使って茶園をよしず・こも・寒冷紗(かんれいしゃ:日よけ用の網)などで2〜3週間ほど覆い、その「覆下茶園」(おおいしたちゃえん)から摘んだ葉で作ります。玉露も20日ほど、かぶせ茶も7日ほど覆って育て、この3つをまとめて「おおい茶」と呼びます。
覆うと旨味が増え、渋みが減る
農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)は、抹茶は煎茶に比べて、旨味のもとになるテアニンなどのアミノ酸が多いとしています。覆いをかけると、カテキン(渋みのもとになる成分)のうちエピガロカテキン(EGC)が減り、エピガロカテキンガレート(EGCG)は変わりません。
日光をさえぎると葉の緑も濃くなります。覆い方や期間の詳しい違いは、生産者向けの碾茶とは?抹茶の原料の作り方で取り上げています。
作り方の違い:揉まずに乾かして挽くか、揉んで乾かすか
煎茶は蒸した葉を揉みながら乾かし、碾茶は蒸した葉を揉まずに乾かします。抹茶は、この碾茶を茶臼で細かい粉にしたものです。
煎茶の作り方
日本茶業中央会の表示基準は、煎茶を「茶葉を蒸熱、揉捻、乾燥して製造したもの」と定義しています。揉捻(じゅうねん)は葉を揉む工程です。農林水産省の資料では、煎茶には揉みながら乾かす工程に加えて、形を細長く整える工程(精揉:せいじゅう)があります。
抹茶の作り方
抹茶は、次の順で作ります。
- 覆った茶園から新芽を摘み、蒸す
- 揉まずに、碾茶炉(てんちゃろ:碾茶を乾かす専用の炉)などで乾かす
- 風選機などで茎や葉脈を取り除き、葉の部分を碾茶として仕上げる
- 碾茶を茶臼で微粉末にする
表示基準は、茶臼を「碾茶を微粉末化して抹茶にするために用いる石臼」とし、石臼と同じ働きをする粉砕機も含むとしています。碾茶は揉む工程がなく、碾茶炉などの乾燥機で乾かすため、製造ラインの機械が煎茶と違います。農研機構などのマニュアルは、碾茶の製造ラインを、蒸す機械・碾茶機(乾燥機)・風選機・茎を分ける機械などが並ぶ図で示しています。
飲み方の違い:粉ごと飲むか、出たお茶だけを飲むか
抹茶は粉をお湯に溶かして茶葉ごと飲み、煎茶は茶葉にお湯を注いで出たお茶だけを飲みます。この飲み方の差が、1杯で口にする成分の量を大きく変えます。
抹茶の点て方
京都府茶業研究所は、ふるった抹茶を茶杓(ちゃしゃく)2杯分、約2g茶碗に入れ、70〜80℃に冷ましたお湯70mLで点てるとしています。量・湯温・茶筅の動かし方は抹茶の点て方にまとめています。
煎茶の淹れ方
京都府茶業研究所は、急須に茶葉を約10g入れ、70℃くらいに冷ましたお湯を注ぎ、約2分待って茶碗に注ぎ分けるとしています。茶葉は急須に残り、同じ茶葉で二煎目以降も淹れられます。二煎目以降は、お湯の温度を上げ、待つ時間を短くします。
成分の違い:茶葉100gあたりで比べる
茶葉100gあたりで比べると、カフェインは抹茶のほうが多く、ビタミンCは煎茶のほうが多くなっています。どちらかがすべての成分で多いわけではありません。
成分表の値
成分表の抹茶(茶)とせん茶(茶)の100gあたりの主な値は、次のとおりです。
| 成分(100gあたり) | 抹茶 | せん茶(茶葉) |
|---|---|---|
| カフェイン | 3.2g | 2.3g |
| タンニン | 10.0g | 13.0g |
| β-カロテン当量 | 29,000μg | 13,000μg |
| ビタミンK | 2,900μg | 1,400μg |
| ビタミンC | 60mg | 260mg |
| 食物繊維総量 | 38.5g | 46.5g |
| たんぱく質 | 29.6g | 24.5g |
| エネルギー | 237kcal | 229kcal |
カフェインとタンニン(渋みの成分)は、成分表の備考欄に載っている値です。
出典: 文部科学省 食品成分データベース「抹茶 茶」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年) https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=16_16035_7
テアニンは成分表に載っていない
旨味のもとのテアニンは、成分表の項目にありません。農研機構が国産の抹茶56試料を調べたところ、値段の高い抹茶ほどテアニンが多い傾向がありました。テアニンなどのアミノ酸は、抹茶のほうが煎茶より多いとされています。
同じ抹茶でも値は変わる
成分表は、茶は上級品と下級品で成分がかなり違うとしたうえで、主に中級品を分析しています。同じ抹茶でも等級(品質)で値は変わるため、表の値は目安です。等級ごとの違いは抹茶のグレードの違いにまとめています。
1杯あたりで比べると(成分表の値から計算)
飲む量で比べると、抹茶は1杯で口にするカフェインやβ-カロテンが煎茶より多くなります。抹茶は茶葉を丸ごと飲み、煎茶はお湯に出た成分だけを飲むためです。
抹茶2gと、煎茶の浸出液100g
抹茶は京都府茶業研究所の点て方で1杯分の2gとし、成分表の100gあたりの値に0.02を掛けて計算しました。煎茶は、成分表の「せん茶 浸出液」100gの値をそのまま使っています。成分表の浸出液は、茶葉10gを90℃のお湯430mLで1分浸して作ったものです。
出典: 文部科学省 食品成分データベース「せん茶 浸出液」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年) https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=16_16037_7
| 成分 | 抹茶2g(計算) | 煎茶の浸出液100g |
|---|---|---|
| カフェイン | 64mg | 20mg |
| タンニン | 200mg | 70mg |
| β-カロテン当量 | 580μg | 0(推定) |
| ビタミンK | 58μg | 微量 |
| ビタミンC | 1.2mg | 6mg |
| 食物繊維総量 | 0.77g | 未測定 |
| エネルギー | 4.7kcal | 2kcal |
計算で分かること
- カフェインは、抹茶2gで煎茶の浸出液100gの約3倍になる
- 茶葉に多いβ-カロテンやビタミンKは、煎茶の浸出液にはほとんど出てこない
- ビタミンCは、茶葉100gでは煎茶が多く、1杯でも煎茶の浸出液のほうが多い
抹茶ラテなどで1杯に抹茶を3g使うと、カフェインは計算で96mgです。煎茶は茶葉の量・お湯の温度・浸す時間で出てくる量が変わるため、この表の値は成分表の淹れ方での値です。
値段の違い:碾茶は煎茶の約4.9倍
2025年産の荒茶の全茶期平均の値段は、碾茶が1kg 8,562円、煎茶が1,746円で、碾茶は煎茶の約4.9倍でした。碾茶には、茶園を覆う、揉まずに碾茶炉などで乾かす、茎や葉脈を除くといった煎茶にない工程があります。
茶期別の荒茶の値段
農林水産省の資料(全国茶生産団体連合会調べ)による、2025年産の荒茶の1kgあたりの値段は次のとおりです。
| 2025年産(全国) | 一番茶 | 二番茶 | 全茶期の平均 |
|---|---|---|---|
| 碾茶 | 10,030円 | 4,950円 | 8,562円 |
| 煎茶 | 2,278円 | 1,321円 | 1,746円 |
一番茶どうしでも、碾茶は煎茶の約4.4倍(計算)です。荒茶は仕上げる前のお茶で、抹茶にするには、ここから茎や葉脈を除き、臼で挽く工程が加わります。
値上がりは続いている
一保堂茶舗によると、2024年ごろから世界的に抹茶への関心が高まり、需要が急に増えました。同社がまとめた京都の市場(全農京都茶市場)の一番茶の取引平均単価は、2024年から2026年(6月19日時点)に碾茶が約3.3倍、煎茶が約2.0倍になりました。値上がりの理由と見通しは抹茶は今も足りないのかで詳しく見ています。
抹茶と緑茶パウダー(粉末茶)・粉茶の違い
緑色の粉でも、碾茶を挽いたものだけが抹茶で、煎茶などを粉砕機で粉にしたものは粉末茶という別の茶です。海外で「green tea powder」と書かれた粉は、抹茶のことも粉末茶のこともあります。
表示基準での分け方
日本茶業中央会の表示基準は、粉のお茶を次のように分けています。
| 名称 | 定義 |
|---|---|
| 抹茶 | 碾茶を茶臼などで微粉末状に製造したもの |
| 粉末茶 | 茶を粉砕機などで粉末にしたもの |
| 粉茶 | 仕上げの工程でふるい分けされた粉状の茶 |
| インスタントティー | 緑茶から水に溶ける成分を抽出し、濃縮・乾燥して粉や粒にしたもの |
粉茶(こなちゃ)は、名前が似ていても抹茶や粉末茶とは別の茶です。茶を仕上げる工程でふるい分けた粉状の茶(切断された葉なども含む)で、輸出の統計でも「粉末状のもの」ではなく「その他のもの」に入ります。
成分にも差が出る
農研機構の調査では、国産の抹茶56試料のうちテアニンが1%以下だったのは1試料だけで、市販の粉末茶6試料はすべて1%以下でした。葉緑素の量とよく相関する緑色の指標も、抹茶はすべて一定の値(0.4)以上で、粉末茶はこの値を超えるものがありませんでした。ラベルの見方と本物かを確かめる手順はPure matcha(ピュア抹茶)とはに、等級の考え方は抹茶の等級にまとめています。
カフェのメニューでの使い分け
ミルクや甘味に混ぜるメニューには抹茶、淹れて出すお茶には煎茶が向きます。抹茶は粉ごと溶けるので、色と味がドリンクにそのまま残ります。
抹茶が向くメニュー
- 抹茶ラテ、アイス抹茶ラテ、ストレートの抹茶
- 甘いドリンクやスムージー、焼き菓子、アイスクリーム
粉を液体に溶かすので、茶葉を濾す手間がなく、1杯の量をgで決められます。ラテに向く等級と配合はカフェの抹茶ラテに使う抹茶の選び方を参考にしてください。
煎茶が向くメニュー
- 急須やポットで淹れる温かい緑茶
- 冷やして出す緑茶
茶葉を浸して淹れるので、注いだあとに茶葉を取り除きます。京都府茶業研究所の淹れ方では、茶葉約10gに70℃くらいのお湯で約2分です。
メニュー名と仕入れで確かめること
メニューに「抹茶」と書くなら、仕入れる粉の原料が碾茶かを仕様書で確かめます。値段の安い緑色の粉には、粉末茶やラテ用のミックスもあります。仕入れ先には、次の点を出してもらいます。
- 原材料と名称(抹茶か、粉末茶か、砂糖などの入ったミックスか)
- 産地と茶期(一番茶か二番茶以降か)
- ロット番号と分析証明書、残留農薬の検査結果
産地ごとの違いは宇治抹茶とはなどの産地の記事に、言葉の意味は抹茶の用語集にまとめています。
参考にした情報
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
- 文部科学省 食品成分データベース「抹茶 茶」(食品番号16035) https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=16_16035_7
- 文部科学省 食品成分データベース「せん茶 茶」(食品番号16036) https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=16_16036_7
- 文部科学省 食品成分データベース「せん茶 浸出液」(食品番号16037) https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=16_16037_7
- 日本茶業中央会「緑茶の表示基準」(2026年7月10日最終改正) https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
- 農林水産省「茶をめぐる情勢(令和8年10月)」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/attach/pdf/ocha-201.pdf
- 一保堂茶舗「2026年10月・11月 商品仕様の見直しと価格改定について」(全農京都茶市場の取引平均単価) https://www.ippodo-tea.co.jp/blogs/news/20260901
- 農研機構「国産抹茶の価格と化学成分含有量の関係」(2018年) https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2018/nifts18_s16.html
- 農研機構「被覆茶安定生産マニュアル」(2018年) https://www.naro.go.jp/PUBLICITY_REPORT/publication/files/hihukucha-antei_man201803.pdf
- 農食事業26099コンソーシアム(農研機構ほか)「日本茶業の活性化に資する茶品種育成とその栽培・加工技術マニュアル -緑茶用新品種「せいめい」を中心に-」(2019年) https://www.naro.go.jp/PUBLICITY_REPORT/publication/files/nifts_teaikusei_pamph201903031.pdf
- 京都府茶業研究所「お茶のおいしい入れ方 抹茶」 https://www.pref.kyoto.jp/chaken/irekata_maccha.html
- 京都府茶業研究所「お茶のおいしい入れ方 煎茶」 https://www.pref.kyoto.jp/chaken/irekata_sencha.html
























































































