抹茶ラテはタイのカフェで定番になりましたが、同じ「抹茶」でも、仕入れる粉によって色・味・原価が大きく変わります。この記事では、カフェで抹茶ラテを出すときに、どの抹茶をどれだけ使い、1杯いくらの原価になるかを、日本の公的な資料と抹茶の専門店のレシピをもとに見ていきます。
抹茶ラテとは
抹茶ラテは、抹茶を少量のお湯で溶き、ミルクで割った飲み物です。抹茶は茶葉を粉にしたものなので、お茶をいれて飲む緑茶と違い、茶葉そのものを飲むことになります。
緑茶ミルクとの違い
緑茶ミルクや緑茶ラテと呼ばれる飲み物には、抹茶ではなく、煎茶などを機械で粉にした粉末茶や、緑茶のエキスを使ったものもあります。色や香りが抹茶とは違うため、メニューで「抹茶」とうたうなら、原料が抹茶かどうかを確かめておく必要があります。
抹茶と緑茶粉の違い
日本の業界の表示基準では、抹茶は「碾茶を茶臼などで微粉末にしたもの」と定義されています。碾茶(てんちゃ)は、摘む前に茶園を2〜3週間ほど覆って育て、蒸したあと揉まずに乾かした茶葉です。覆って育てると葉緑素が増えるため、緑が濃くなります。
表示基準の定義
日本茶業中央会の「緑茶の表示基準」(2026年7月10日最終改正)は、抹茶と粉末茶を別の茶として定義しています。
- 抹茶:碾茶を茶臼などで微粉末状にしたもの
- 粉末茶:茶を粉砕機などで粉末にしたもの
出典: 日本茶業中央会「緑茶の表示基準」 https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
タイの市場で起きていること
タイの日本茶の輸入事業者の代表は、ジェトロの取材に対し、タイでは表示の不一致や他国産の茶の混在があり、品質に対して価格が大きく乖離した商品もあると話しています。「抹茶」「日本産」と書かれていても、産地や原料の証明を出してもらえるかを仕入れ先に確かめます。
ラテに向く等級
抹茶の等級は「セレモニアル」「ラテ」「カリナリー」などの名前で売られていますが、日本の緑茶の表示基準にも、これらの呼び名の定義はありません。名前ではなく、中身で選びます。
名前より、茶期・産地・挽き方を見る
等級の差を生むのは、主に次の3つです。
- 茶期:その年の最初に摘む一番茶は、旨味のもとになるテアニンが多く含まれます。二番茶以降はテアニンが少なく、渋みのもとになるカテキンが多くなります。
- 産地:宇治・八女・静岡・鹿児島・宮崎など、産地や品種で香りと色の出方が変わります。
- 挽き方:粒の細かさで口当たりが変わるため、サンプルをミルクで割って確かめます。
ラテに合う等級の考え方
ミルクで割るラテでは、ミルクに負けずに色と味が残ることが大事です。点てて飲むための高い等級は値段が高く、ミルクで割ると違いが分かりにくいこともあります。ラテ向けの抹茶の中で、茶期と挽き方の違いを見て選びます。
Omakase Matchaの抹茶は、すべてラテ向けで、茶期と挽き方によって次の3つの等級に分けています。
- プレミアム:一番茶だけを石臼で挽いたもの
- スタンダード:一番茶、または一番茶と二番茶を合わせて機械で挽いたもの
- ベーシック:二番茶以降の茶葉を使ったもの
違いは抹茶の等級にまとめています。
抹茶ラテの基本の配合
配合は、抹茶の専門店のレシピを出発点にし、店のカップとミルクに合わせて増減します。
ホット
京都の老舗、一保堂茶舗の公式レシピは次のとおりです。
- 抹茶:3g(ふるっておく)
- お湯:100ml(80℃)
- 牛乳:100ml(温めるか泡立てる)
京都府茶業研究所は、抹茶を点てるときは、沸騰させたお湯を冷まして70〜80℃で使うよう案内しています。ラテでも、この温度帯のお湯で抹茶を溶きます。
アイス
一保堂茶舗のアイス抹茶ラテの公式レシピも、抹茶はホットと同じ3gです。
- 抹茶:3g
- お湯:100ml(80℃)
- 牛乳:100ml(冷たいもの)と氷
ここからは編集部の調整案です。16オンスなど大きなカップで出す店や、氷が溶けて薄く感じる場合は、総量に合わせて抹茶とミルクを増やします。
ミルクを変えるときに確かめること
牛乳、オーツミルク、豆乳、ココナッツミルクでは、甘さ、とろみ、色が違うことがあります。同じ抹茶・同じ分量でも味が変わることがあるため、メニューで使うミルクごとに、抹茶の量を決め直します。オーツミルクで出すときの考え方は、オーツミルクラテに合う抹茶の選び方にまとめています。
比べるときは、次の5点を見ます。
- 色:作りたてと10分後で、緑がどれだけ残るか
- 香り:最初の一口で抹茶の香りが分かるか
- 苦み:飲み終わりに苦みや渋みが残りすぎないか
- 口当たり:粉っぽさやざらつきがないか
- 甘さ:メニューで使う甘味料を入れたときに、抹茶の味が残るか
1杯の原価と、売価に合わせた選び方
抹茶ラテの利益は、1杯に使う抹茶の量と、抹茶の仕入れ値で大きく変わります。先に計算式を決めておくと、等級を比べやすくなります。
1杯の抹茶代の計算式
1杯の抹茶代は、次の式で計算します。
1杯の抹茶代 = 1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 1杯に使うグラム数
1杯3gなら、1kgの抹茶で約330杯分です。4gなら250杯分になります。1杯の抹茶代に、ミルク、甘味料、カップ、ストローなどの代金を足したものが、1杯の材料費です。1kgあたりの仕入れ値がどう決まるかは抹茶の値段はどう決まるのかにまとめています。
売価に合わせて決める
Time Out Bangkokが2025年3月に紹介したバンコクの抹茶専門店では、抹茶ラテは1杯120〜185バーツでした。
売価に合わせた選び方について、編集部では次のように考えています。売価が高めの店なら、一番茶の多い等級を使い、抹茶の量も多くして味の違いを出すという選び方があります。売価を抑えたい店なら、一番茶と二番茶を合わせたものや二番茶以降の等級を使い、1杯の量を決めて原価をそろえるという選び方があります。
決め方の順番は次のとおりです。
- メニューの売価と、材料費の上限を決める
- ミルク・甘味料・カップの代金を引き、抹茶に使える金額を出す
- その金額で、1杯に何グラム使える抹茶かを等級ごとに計算する
- その量で作ったラテを、店のミルクで飲み比べる
仕入れのときに確かめること
日本の抹茶をタイで仕入れるときは、品質の書類と、輸入の手続きの両方を確かめます。
品質の書類
仕入れ先には、次の情報を出してもらいます。
- 産地と茶期、品種(合わせたものなら、その内訳)
- ロット番号(どの時期に作ったものかが分かる番号)
- 残留農薬の検査結果と、成分の分析証明書(COA)
- 賞味期限と保存方法
タイへの輸入の手続き
ジェトロ(2024年10月時点の調査)によると、タイに茶を輸入するには次のものが要ります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 植物検疫証明書 | 茶はタイで輸入が制限される植物にあたり、輸出国の証明書が要る(一定以上加工したものは不要) |
| GMP証明 | 製造施設が製造基準に合っていることの証明。ISO 22000やFSSC 22000などで示す |
| 輸入許可と食品登録 | 輸入者がタイFDAの食品輸入許可を取り、商品ごとに食品登録番号を取る |
| タイ語のラベル | 食品名、登録番号、内容量、輸入者、製造国などをタイ語で表示する |
| 関税 | 割当の枠内は30%、枠外は90%。日タイ経済連携協定を使うと枠内は無税 |
タイの茶の規格(保健省告示第196号)では、茶葉の水分は8%以下と決められています。輸入の手続きを誰が担うか(自店か、輸入代理店か)も、仕入れの前に決めておきます。
日本の産地とタイ向けの輸出
日本からタイへの緑茶の輸出は、2025年に大きく伸びたあと、2026年は量が減って値段が上がっています。
タイ向けの緑茶の輸出
日本茶輸出促進協議会の集計では、2025年のタイ向けの緑茶の輸出は907トン、29.5億円で、国別で4位でした。2026年1〜8月は358.7トンで前年の同じ時期より40.7%減りましたが、金額は18.3億円で6.8%増えています。1kgあたりの値段は約1.8倍になりました。
出典: 日本茶輸出促進協議会「緑茶の国別・形状別輸出実績 2026年1〜8月」 https://nihon-cha.or.jp/export/wordpress/wp-content/uploads/2026-08_cha_export.pdf
日本の抹茶の値段が上がっているため、同じ等級を続けて仕入れられるか、値段がどれだけ変わりうるかも、仕入れ先と話しておきます。
産地ごとの違い
Omakase Matchaは、宇治・八女・静岡・鹿児島・宮崎の抹茶を扱っています。産地ごとの特徴は抹茶の産地にまとめています。ラテ用の抹茶には複数の碾茶を合わせて作るものもあるため、産地は候補を絞る目安にし、最後は店のミルクで飲み比べて決めます。
参考にした情報
- 日本茶業中央会「緑茶の表示基準」 https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
- 一保堂茶舗「Matcha Latte Recipe」 https://ippodotea.com/blogs/recipes-to-brew-japanese-tea/matcha-latte-recipe
- Compositional Diversity and Functional Interactions of Bioactive Compounds in Japanese Green Tea: Focus on Matcha, Sencha, and Gyokuro(PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13515311/
- 一保堂茶舗「Iced Matcha Latte」 https://ippodotea.com/blogs/recipes-to-brew-japanese-tea/iced-matcha-latte
- 京都府茶業研究所「お茶のおいしい入れ方 抹茶」 https://www.pref.kyoto.jp/chaken/irekata_maccha.html
- ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(タイ)」 https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/foods/exportguide/greentea.html
- ジェトロ「抹茶ブームを経て本格的な普及段階に移行するASEAN日本茶市場」(2026年5月18日) https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2026/d7cf7db2e5a71454.html
- 日本茶輸出促進協議会「緑茶の国別・形状別輸出実績 2025年1〜12月」 https://nihon-cha.or.jp/export/wordpress/wp-content/uploads/2025-12_cha_export.pdf
- 日本茶輸出促進協議会「緑茶の国別・形状別輸出実績 2026年1〜8月」 https://nihon-cha.or.jp/export/wordpress/wp-content/uploads/2026-08_cha_export.pdf
- Time Out Bangkok「Go green: discover the best matcha teas in Bangkok」(2025年3月) https://www.timeout.com/bangkok/restaurants/go-green-discover-the-best-matcha-teas-in-bangkok
























































































