2025年は、日本の老舗が抹茶の販売を制限し、海外のカフェでも仕入れ値が上がりました。2026年になって量は戻ってきましたが、値段は下がっていません。値段がどれだけ、なぜ上がったのかを日本の統計と老舗の発表で確かめると、カフェが仕入れで打てる手も見えてきます。
抹茶は今も足りないのか
2026年は主な産地の一番茶が前年より21%多く取れましたが、抹茶の原料の値段はさらに上がりました。抹茶は、量が足りないという状態から、値段が下がらない状態に変わっています。
2026年の一番茶は豊作だった
農林水産省によると、2026年産の一番茶(その年の最初に摘むお茶)の荒茶(あらちゃ:摘んだ茶葉を蒸して乾かした、仕上げ前のお茶)は、主な産地の5府県で24,100トンでした。前年より21%多く、理由は天候に恵まれて茶葉がよく育ったことです。
この数字は、抹茶の原料と煎茶などを分けていない合計です。抹茶の原料だけの2026年の生産量は、まだ公表されていません。
それでも値段は下がらなかった
京都の茶市場では、2026年の碾茶(てんちゃ:抹茶の原料になる茶葉)の一番茶の取引平均単価が1kg 17,797円(6月19日時点)でした。2025年の14,144円より約26%高い値段です。
京都の老舗の一保堂茶舗は、2026年は抹茶の生産量が大きく伸びたものの、需要が強く、取引価格は前年を上回ったと説明しています。一保堂茶舗によると、2026年は玉露・煎茶・番茶類の生産量は大きく減りました。抹茶は量が戻っても値段が戻らず、ほかのお茶は量も減った年になりました。
抹茶の値段はどれだけ上がったか
京都の市場の碾茶の値段は、2024年から2026年の2年で約3.3倍になりました。値上がりは抹茶の原料だけでなく、玉露・煎茶・番茶にも広がっています。
京都の市場の茶種別の値段
一保堂茶舗が2026年9月に公開した、全農京都茶市場の一番茶の取引平均単価(京都府茶業会議所のデータ)は次のとおりです。
| 茶の種類 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2026年 | 2024年から2026年 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 抹茶の原料(碾茶) | 4,121円 | 4,738円 | 5,402円 | 14,144円 | 17,797円 | 約3.3倍 |
| 玉露 | 4,349円 | 5,063円 | 5,487円 | 8,447円 | 14,249円 | 約2.6倍 |
| 煎茶 | 2,884円 | 3,445円 | 3,407円 | 4,482円 | 6,657円 | 約2.0倍 |
| 番茶 | 598円 | 665円 | 674円 | 1,225円 | 2,850円 | 約4.2倍 |
単位は1kgあたり。2026年は6月19日時点。
出典: 一保堂茶舗「2026年10月・11月 商品仕様の見直しと価格改定について」 https://www.ippodo-tea.co.jp/blogs/news/20260901
碾茶は2024年から2025年に、5,402円から14,144円へ約2.6倍になり、上がった幅は約162%でした。
全国でも、一番茶の値段が上がった
農林水産省によると、2026年産の一番茶は、前年と比べて鹿児島県で約2倍、静岡県で約7割高い値段で取引されました。値上がりは京都だけの話ではありません。
輸出は、量より値段が増えた
日本茶輸出促進協議会の集計では、2026年1〜8月の緑茶の輸出は、金額が前年同期より77.3%増えたのに対し、量は3.2%増にとどまりました。輸出の伸びの大半は、値段の上昇によるものです。
| 2025年1〜8月 | 2026年1〜8月 | |
|---|---|---|
| 輸出量 | 7,732トン | 7,983トン |
| 輸出額 | 380.2億円 | 674.1億円 |
| 1kgあたり(緑茶全体) | 4,918円 | 8,444円 |
| 1kgあたり(粉末状) | 6,015円 | 9,971円 |
統計の「粉末状」は、抹茶とそれ以外の粉末のお茶を合わせた数字です。抹茶だけの輸出統計はありません。
タイとシンガポール向けの粉末状の緑茶は、次のように量が減り、値段が上がりました。
| 輸出先 | 量(前年同期比) | 1kgあたり(2025年1〜8月→2026年1〜8月) |
|---|---|---|
| タイ | 140.8トン(46.4%) | 4,190円→8,840円(約2.1倍) |
| シンガポール | 52.8トン(89.0%) | 7,097円→9,531円(約1.3倍) |
タイ向けは、量が前年の半分以下になり、1kgあたりの値段は2倍を超えました。
抹茶はなぜ高いのか
抹茶は、育て方と作り方にもともと手間がかかるお茶です。そのうえ、碾茶は煎茶より高い値段で取引されるため、原料が碾茶に移り、ほかのお茶の値段も上がっています。
覆って育て、揉まずに乾かし、臼で挽く
農林水産省によると、碾茶は、茶畑を2〜3週間ほど覆って日光をさえぎって育てた茶葉を摘み、揉まずに碾茶炉で乾かして作ります。この碾茶を茶臼などで細かい粉にしたものが抹茶です。
煎茶のように揉む工程がない代わりに、覆いをかける作業と、碾茶専用の乾燥の設備が必要です。ジェトロは2026年5月のレポートで、碾茶は覆いをかける手間とコストがかかり、需要に供給が追いついていないとしています。
碾茶は煎茶の約4.9倍で取引される
農林水産省の資料(全国茶生産団体連合会調べ)では、2025年産の碾茶の値段は、全茶期の平均で1kg 8,562円でした。煎茶の1,746円の約4.9倍です。
| 2025年産(全国) | 一番茶 | 二番茶 | 全茶期の平均 |
|---|---|---|---|
| 碾茶 | 10,030円 | 4,950円 | 8,562円 |
| 煎茶 | 2,278円 | 1,321円 | 1,746円 |
単位は1kgあたり。
原料が抹茶に回り、ほかのお茶も上がった
煎茶や玉露の原料が、抹茶用に回っています。京都の茶商の山政小山園は2026年7月の発表で、2026年度は玉露・煎茶など多くの緑茶の原料が抹茶用に転用され、供給が大きく減り、緑茶の原料の値段も上がったと説明しています。
出典: 山政小山園「価格改定のお知らせ」 https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/info/2026/post-10/
一保堂茶舗は、抹茶は同じ重さで比べても値段が高く、収量が多く生産効率も高いため、抹茶の生産への切り替えが続くと見ています。抹茶だけでなく、煎茶や番茶を使うメニューを出している店も、仕入れ値が上がる可能性があります。
需要が増えた理由
値上がりのきっかけは、2024年ごろからの世界的な需要の急増です。一保堂茶舗は、2024年ごろから世界的に抹茶への関心が高まって需要が急増し、2025年産は供給が足りず取り合いの様相になったと説明しています。山政小山園は、海外の需要の急増と、日本を訪れた外国人の抹茶の購入の急増を値上げの主な理由に挙げています。
輸出の数字にも、この需要が表れています。農林水産省によると、2025年の緑茶の輸出額は720.9億円で、前年の約2倍(98.2%増)でした。輸出量は12,612トンです。農林水産省は、粉末状の緑茶が輸出額の約8割を占めるとしています。
供給がすぐに増えない理由
抹茶の量を増やすには、茶畑と工場の両方に時間がかかります。値段が上がっても、すぐには量が追いつきません。
植えてから収穫まで5年ほど
一保堂茶舗は、新しく茶畑を作っても収穫まで5年ほどかかると説明しています。農林水産省の広報誌で紹介された静岡県掛川市の茶園も、苗を植えた5年後から収穫できるとしています。2024年に需要が増えてから新しく植えた茶の木は、まだ収穫の時期を迎えていません。
茶畑は減り、工場は増え始めた
農林水産省によると、日本の茶の栽培面積は緩やかに減っています。一方で、碾茶の生産は増えています。2025年産の碾茶は6,278トンで、2014年の約3.2倍になり、荒茶の生産量の8.6%を占めました。
鹿児島県によると、鹿児島市の松元地域では2つの法人が新しく碾茶の工場を建て、2026年4月に動き始めました。一保堂茶舗と山政小山園の説明のとおり、茶畑が増えない中で碾茶への切り替えが進むと、そのぶん玉露や煎茶の原料が減ります。
老舗の値上げと販売制限、関税
京都の老舗と大手の茶メーカーは、2025年から続けて値上げをしています。販売の量を制限しているところもあります。
公式に発表された値上げと販売制限
| 会社 | 発表した内容 |
|---|---|
| 一保堂茶舗 | 2025年10月に抹茶商品の値上げと仕様の見直し。2026年2月に番茶類の販売を制限。2026年10月・11月に一部商品の仕様の見直しと値上げ |
| 山政小山園 | 2025年と2026年度の2年続けて抹茶などを値上げ。抹茶の販売量の制限と、納期の遅れがある |
| 伊藤園 | 2025年7月に発表し、9月1日から抹茶製品19品の希望小売価格を48.8〜100.0%引き上げ |
山政小山園は2026年9月4日、抹茶の300g缶と150g缶に、はがすと「開封済」の跡が残るシールを付けると発表しました(賞味期限が2027年5月以降の製品から順次)。中身を詰め替えて売るのを防ぐためです。
米国の関税は、今は緑茶にかからない
2025年には、米国の関税も抹茶の値上がりの理由として報じられました。2026年10月時点では、日本産の緑茶(抹茶を含む)は米国の追加関税の対象から外れています。
- 2025年11月の大統領令で、緑茶は相互関税の対象外になった(ジェトロ)
- 2026年7月24日からの通商法301条による関税(日本は通常の関税と合わせて12.5%)でも、緑茶は除外品目に入っている(米国通商代表部の官報告示)
米国の関税の扱いは今後も変わる可能性があります。タイやシンガポールの店の仕入れには、米国の関税は直接かかわりません。
値上がりはいつまで続くか
値段が下がる時期を示した公的な見通しはありません。分かっていることと、分かっていないことを分けておきます。
分かっていることは次の3つです。
- 2026年は一番茶が豊作でも、碾茶の値段は前年を上回った
- 新しい茶畑から収穫できるまで5年ほどかかる
- 一保堂茶舗は、以前のような価格水準に完全に戻るかは見通せず、今の水準がある程度続くと予想している
分かっていないことは、2026年産の碾茶だけの全国の生産量(2026年10月時点で未公表)、来年の天候、海外の需要がこのまま続くかです。カフェとしては、今の値段がしばらく続く前提で計画を立てておくと、急な値上げに慌てずに済みます。
カフェが仕入れでできること
値段が高い状態が続く前提で、等級・量・時期・仕入れ先の4つを見直します。
1. 用途ごとに等級を分ける
ストレートで出す抹茶と、ラテに使う抹茶は、同じ等級である必要はありません。ラテに向く等級は、ストレート用より手ごろなものから選べます。等級の違いは抹茶の等級の違いに、ラテ向けの選び方はカフェの抹茶ラテに使う抹茶の選び方にまとめています。
2. 1杯の原価と売価を計算し直す
1杯の抹茶代は、1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 1杯に使うグラム数で計算できます。1杯に使う抹茶の量が同じなら、仕入れ値が2倍になると1杯の抹茶代も2倍になります。値上がり分を売価に乗せるか、1杯の量や等級で調整するかを、この計算で決めます。1kgあたりの仕入れ値がどう決まるかは抹茶の値段はどう決まるのかにまとめています。
3. 年間に使う量を早めに伝える
山政小山園は、新茶期の碾茶の取引価格が、その後1年の抹茶の製造コストの基礎を決めると説明しています。一保堂茶舗によると、お茶の取引は4月から始まります。編集部では、年間にどれくらい使うかを春の新茶期より前に仕入れ先へ伝え、確保できる量と値段の決まり方を話しておくことを勧めます。2025年には、米国の日系の輸入業者が、既存の取引先にも供給が間に合わず新しい取引先を断っているとジェトロに話していました。
4. 正規の仕入れ先から買い、書類を確かめる
山政小山園が封印シールを付けたのは、中身の詰め替えを防ぐためです。メーカーの正規の取引先から買い、次の点を確かめます。
- 産地と茶期、ロット番号(いつ作ったものかが分かる番号)
- 残留農薬の検査結果と、成分の分析証明書
- 缶入りなら、メーカーの封印シールなどが付いているか
日本茶業中央会の表示基準では、抹茶は碾茶を茶臼などで細かい粉にしたものとされています。茶を粉砕機などで粉にした粉末茶とは別のものなので、商品名と原材料の表示も見ておきます。
参考にした情報
- 農林水産省「令和8年産一番茶の摘採面積、生葉収穫量及び荒茶生産量(主産県)」(2026年8月18日) https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/pdf/syukaku_1tya_26.pdf
- 農林水産省「茶をめぐる情勢(令和8年10月)」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/attach/pdf/ocha-201.pdf
- 農林水産省「2025年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_info/attach/pdf/zisseki-308.pdf
- 農林水産省 広報誌aff 2022年4月号 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2204/spe1_02.html
- 日本茶輸出促進協議会「緑茶の国別・形状別輸出実績 2026年1〜8月」 https://nihon-cha.or.jp/export/wordpress/wp-content/uploads/2026-08_cha_export.pdf
- 一保堂茶舗「2026年10月・11月 商品仕様の見直しと価格改定について」(2026年9月1日) https://www.ippodo-tea.co.jp/blogs/news/20260901
- 山政小山園「価格改定のお知らせ」(2025年7月1日) https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/info/2025/post-9/
- 山政小山園「価格改定のお知らせ」(2026年7月1日) https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/info/2026/post-10/
- 山政小山園「抹茶缶へのセキュリティシール導入について」 https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/info/2026/post-11/
- 伊藤園「抹茶製品と緑茶リーフ製品の価格改定について」 https://www.itoen.co.jp/news/article/76353/
- 鹿児島県 鹿児島地域振興局「農業現地情報(2026年4月)」 https://www.pref.kagoshima.jp/ak09/chiiki/kagoshima/sangyo/nougyou/hukyuu/nougyougenntijouhou202604.html
- ジェトロ「抹茶ブームを経て本格的な普及段階に移行するASEAN日本茶市場」(2026年5月18日) https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2026/d7cf7db2e5a71454.html
- ジェトロ ビジネス短信(2025年10月27日) https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/10/a84a18a913562215.html
- ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(米国)」 https://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/foods/exportguide/greentea.html
- 米国通商代表部「Notice of Actions in Section 301 Investigations」(Federal Register 2026-15181、2026年7月28日) https://www.federalregister.gov/documents/2026/07/28/2026-15181/notice-of-actions-in-section-301-investigations-of-acts-policies-and-practices-of-various-economies
- 日本茶業中央会「緑茶の表示基準」 https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
























































































