抹茶大福や抹茶わらび餅は、抹茶ラテの店でも焼かずに作れて、緑の色を見せやすい和菓子です。一方で、お餅は時間がたつと硬くなり、のどに詰まらせる事故が毎年起きている食べ物でもあります。粉の違いと抹茶の量、出すまでの時間、出し方の注意を、日本の公的機関と企業の公式資料で確かめました。
抹茶のお餅とは:大福・白玉・わらび餅の違い
英語で「matcha mochi」と呼ばれるお菓子は、もち米の粉で作る大福・白玉と、でん粉を煮て固めるわらび餅の2つに大きく分かれます。どちらも「もちもち」した食感ですが、原料も作り方も違います。
もち米の粉で作る大福と白玉
大福は、もち米の粉で作った薄い生地であんを包んだお菓子です。白玉は、白玉粉を水でこねて小さく丸め、ゆでた団子です。農林水産省東海農政局は、白玉粉を大福餅・求肥(ぎゅうひ:もち米の粉に砂糖を加えて練った柔らかい生地)・白玉だんごの原料として挙げています。
抹茶を使う場所は、生地に混ぜる、あんに混ぜる、仕上げにふる、の3つです。
でん粉を煮て固めるわらび餅
わらび餅は、粉と水と砂糖を鍋で煮て、冷やし固めたお菓子です。農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」は、奈良県の伝統食としてわらびもちを紹介し、きな粉をふったり黒蜜をかけたりして食べると書いています。抹茶わらび餅は、生地に抹茶を混ぜるか、仕上げに抹茶をまぶして作ります。
白玉粉・もち粉・上新粉・わらび粉の違い
白玉粉ともち粉はもち米、上新粉はうるち米(ふだん炊いて食べる米)の粉で、わらび粉は米ではなく植物の根のでん粉です。粉が違うと、食感と硬くなる速さが変わります。
米の粉3種類
| 粉 | 原料 | 作り方 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 白玉粉 | もち米 | 水に漬けた米に水を加えながらすりつぶす(水挽製法) | 白玉だんご、求肥、大福餅 |
| もち粉(餅粉) | もち米 | 上新粉と同じ方法(洗って水を切り、粉にして乾かす) | 大福餅、求肥、最中 |
| 上新粉 | うるち米 | 洗って水を切り、生乾きで粉にして乾かす | だんご、柏餅、草餅 |
出典は農林水産省東海農政局の「米粉の種類と用途」です。農林水産省の「米粉の種類と特性」は、もち粉のうち細かいものを「求肥粉」と呼ぶことがあり、白玉粉は求肥粉よりさらに細かく、でん粉以外の成分の多くが流れ出ていると説明しています。
英語では、もち米の粉を glutinous rice flour や sweet rice flour と呼びます。後で紹介する米国のもちアイスのメーカーも、生地の原材料に sweet rice flour と書いています。東海農政局の用途の欄では、大福餅の原料に挙がっているのは白玉粉ともち粉で、上新粉は入っていません。
わらび粉と、代わりに使われるでん粉
農林水産省は、わらび粉をわらびの根をたたいて砕き、水にさらして乾かすことをくり返して作るでん粉と説明しています。小さな根から採るため手間がかかり、高価な食材とされてきました。
出典: 農林水産省「にっぽん伝統食図鑑 わらびもち」 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/menu/warabimoti.html
同じページは、一般に売られているものにはさつまいもやいも類のでん粉を代わりに使うものもあり、わらび粉だけで作ると黒いつやと強い粘りが出ると書いています。「わらび餅粉」として売られている粉は、原材料表示で何のでん粉かを確かめてから仕入れます。色の透明なわらび餅と黒っぽいわらび餅では、抹茶を混ぜたときの見た目も変わると考えられます(編集部の考え方)。
店ではどの粉を選ぶか
大福の生地は白玉粉かもち粉、白玉は白玉粉、わらび餅はわらび粉かでん粉の粉、と用途で分かれます。農林水産省は、もち米の粉について、餅や米菓のように固める必要があるものには硬くなるのが早い原料、大福などには硬くなるのが遅い原料が好まれると書いています。仕入れ先には、大福用か、餅用かを伝えて選ぶと選びやすくなります(編集部の提案)。
公式レシピの抹茶の量を比べる
公的機関と企業の公式レシピ4本では、抹茶の量をgで書いていたのは三重県のわらび餅だけで、粉50gに抹茶2g(4%)でした。ほかの3本は小さじか「抹茶寒天の残り」で書かれていて、重さは分かりません。
4つの公式レシピの比較
| 出典 | お菓子 | 量 | 粉 | 抹茶 | 抹茶を入れる場所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 三重県(伊勢茶わらび餅) | わらび餅 | 4人分 | わらび粉50g | 2g(約80℃の湯10gで溶く) | 練り上がった生地に混ぜる |
| 東芝ライフスタイル(家電メーカー) | 抹茶クリーム大福 | 5個 | 白玉粉50g | 小さじ1 | 粉・砂糖と先に混ぜる |
| 明治(食品メーカー) | 抹茶白玉アイス | 2人分 | 白玉粉50g | 小さじ1/2 | 粉と先に混ぜる |
| 埼玉県(狭山茶の白玉あんみつ、親子料理コンテストの優勝レシピ) | 抹茶白玉 | 4人分 | 白玉粉20g | 抹茶寒天を溶いたボウルの残り | 同じボウルで粉と水を混ぜる |
三重県のレシピは1人分にすると抹茶0.5gです(編集部の計算)。東芝のレシピは、白玉粉50g・砂糖25g・水80mlの生地を5個に分け、生クリームを白こしあんで包んだあんを入れます。
表から分かること
4本とも、生地1回分の粉は20〜50gと少量で、抹茶の量は粉50gに小さじ1/2〜1、または粉の4%でした。小さじの抹茶は、すり切り方や抹茶の粒の細かさで重さが変わるため、店ではgで量って基準を決めます。
抹茶の味と色は、生地に混ぜる量のほか、仕上げにふる抹茶でも足せます。わらび餅を抹茶でまぶす場合は、生地の抹茶とまぶす抹茶の両方を1個あたりの使用量に入れます。
抹茶をあんに入れる大福
東芝のレシピは生地に、明治のレシピは白玉に抹茶を入れていました。抹茶を生地ではなくあんに混ぜれば、白い生地に緑のあんを包んだ大福になり、生地とあんのどちらに入れるかで見た目を変えられます(編集部の提案)。白あんに混ぜる場合は、抹茶を少量の湯で溶いてから加えると混ざりやすくなります(編集部の提案)。
作り方と抹茶の混ぜ方
抹茶は、粉の生地なら最初に粉と混ぜ、わらび餅なら湯で溶いてから練り上がった生地に加えるのが、公式レシピの手順です。どちらもダマを防ぐための順番です。
大福の生地:粉と抹茶を先に混ぜる
東芝のレシピは、耐熱ボウルに白玉粉・砂糖・抹茶を入れて軽く混ぜ、水を少しずつ加えてダマにならないよう混ぜます。電子レンジ(500W)で約1分10秒加熱してよく混ぜ、もう一度同じ時間加熱して半透明になるまで混ぜます。片栗粉を敷いたバットに出して粗熱を取り、5等分してあんを包みます。
白玉:水分は少しずつ加える
明治のレシピは、白玉粉と抹茶に牛乳の4分の3を入れて10分ほど置き、残りを少しずつ加えて耳たぶくらいの柔らかさにします。白玉粉は牛乳と混ざりにくく、湿度で生地の具合が変わるため、液体を一度に入れないよう書いています。丸めた白玉はゆでて浮き上がってから1〜2分ゆで、冷水にとります。
わらび餅:湯で溶いた抹茶を後から混ぜる
三重県のレシピは、わらび粉・砂糖・水を混ぜてこし、強火で木べらで混ぜながら練ります。約80℃の湯で溶いた抹茶は、生地がまとまってから加えます。絞り袋で氷水に絞り出し、一口大に切ります。抹茶をダマなく溶く方法は抹茶シロップの作り方にもまとめています。
硬くなる理由と、出すまでの時間
お餅は温度が下がるほど硬くなります。愛知県の研究機関の学会発表では、冷蔵の5℃で測った求肥は、どの品種も20℃より硬かったと報告されています。冷やして出す抹茶のお餅は、作る時間と出す時間を決めておく必要があります。
冷えると硬くなる
消費者庁は、餅には温度が下がるにしたがって硬さが増す性質があると説明しています。愛知県の研究機関(あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター)の研究者が2024年の日本食品科学工学会の大会で発表した講演要旨では、8品種のもち米の粉で求肥を作って5℃で保存し、品温を5℃と20℃にして硬さなどを測りました。どの品種も20℃より5℃のほうが硬く、8品種中6品種は1日後に比べて7日後に弾力が落ちました。学会での発表で、論文として審査を経た結果ではありません。
米の品種によっても違う
農研機構(日本の農業と食品の国の研究機関)は、もち米のでん粉の成分であるアミロペクチンの構造が、もちの固まりやすさに関係していることを報告しています。上の愛知県の研究でも、硬くなりにくい品種「やわ恋もち」は、7日後も1日後とほとんど変わらない弾力を保っていました。粉のメーカーや原料の米が変わると、同じ配合でも硬くなる速さが変わります。
店での決め方
冷蔵した生地は、出す前に硬さを確かめます。作る量を、その日のうちに売り切れる分に合わせると、硬くなった生地を出さずにすみます(編集部の提案)。生クリームを包んだ大福は冷やして保つ必要があり、生クリームの扱いと冷蔵の温度は抹茶ティラミスで各国の資料をまとめています。抹茶そのものの保存は抹茶の賞味期限と保存にあります。
のどに詰まらせない出し方
東京消防庁によると、2020〜2024年の5年間に餅などをのどに詰まらせて救急搬送された人は管内で338人で、約9割以上が65歳以上でした。お餅を出す店は、一口の大きさと出し方で事故を防ぐ工夫ができます。
東京消防庁と消費者庁の数字
東京消防庁の管内は、稲城市と島しょ部を除く東京都で、集計は団子なども含みます。いちばん多いのは1月の135人、次が12月の42人で、搬送された人の約7割は、入院が必要な中等症以上と診断されました。
出典: 東京消防庁「餅などによる窒息事故に注意!」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/mochi.html
消費者庁は、厚生労働省の人口動態統計をもとに、2022年に食べ物が気道をふさいで(「気道閉塞を生じた食物の誤えん」)亡くなった人は4,696人で、そのうち4,297人が65歳以上だったと紹介しています。口の中くらいの温度(40℃程度)では、餅同士がくっついたり、のどに貼り付きやすくなったりするとも説明しています。
当局が勧めていること
東京消防庁は、餅を小さく切って食べやすい大きさにする、ゆっくりよくかんでから飲み込む、子どもや高齢者の食事を見守る、食べる前にお茶や汁物でのどを潤す、窒息したときの応急手当を覚えておく、を勧めています。消費者庁も、小さく切る、一度に口に入れる量を無理なく食べられるくらいにする、お茶や汁物でのどを潤す、ゆっくりよくかむ、周りの人が見守る、を挙げています。シンガポールとタイの当局が餅に絞って出した注意は、今回見つかりませんでした。
店でできること
- 白玉やわらび餅は一口で食べられる大きさに切る。大福は切って出すか、小さめに作る
- お茶やドリンクと一緒に出し、先に飲み物でのどを潤してもらう
- メニューや札に、小さく切ってよくかんで食べるよう書く
- 子どもや高齢者の客には、切り分けて出すかを聞く
いずれも東京消防庁と消費者庁の勧めを店の出し方に置き換えたもので、当局が店向けに出した指示ではありません(編集部の提案)。お餅を初めて食べる客の多い国では、食べ方の一言を添えると伝わりやすくなります。
アレルゲンと表示
米はシンガポール・タイ・米国・日本のどの国でも、表示が必要なアレルゲンに入っていません。表示が必要になるのは、あん・クリーム・きな粉など一緒に使う材料です。
一緒に使う材料に注意する
| 材料 | 含むアレルゲン |
|---|---|
| きな粉(大豆を炒って粉にしたもの) | 大豆 |
| 生クリーム・牛乳 | 乳 |
| もちアイスの生地(米国のメーカーの例) | 卵白(卵) |
シンガポール食品庁は包装食品で表示が必要な品目に大豆(落花生と同じ群)を挙げ、タイの告示No.450も大豆を表示の対象に入れています。米国の主要アレルゲン9品目にも大豆が入っています。日本では大豆は表示が勧められる20品目の一つです。米国のもちアイスのメーカーMy/Moは、抹茶味の生地にもち米の粉と卵白を使い、「乳・卵を含む」と表示しています。抹茶アイスの配合は抹茶アイス・抹茶ソフトクリームで比べています。
店で出すときの表示
国ごとの表示の決まりと、店で作って店で出す食品が表示の義務から外れる場合の条件は、抹茶クッキーにまとめています。表示の義務がない場合でも、メニューに大豆・乳を含むと書いておくと、客が注文の前に確かめられます(編集部の提案)。ハラールの認証を受けた店で出す場合の材料の確かめ方は、ハラール抹茶にあります。
合う等級と1個の原価
抹茶のお餅は長く焼かずに作るため、焼き菓子より抹茶の色と香りを出しやすいお菓子です。1個の抹茶代は、生地とまぶす抹茶の量を足して計算します。
合う等級
抹茶の緑は熱で落ちやすく、焼き菓子では茶色っぽくなります。三重県のわらび餅のように生地を練り上げてから抹茶を混ぜたり、仕上げにまぶしたりすれば、抹茶が熱を受ける時間を短くできます。仕上げにまぶす抹茶は口に直接触れるため、生地に混ぜる抹茶とまぶす抹茶で等級を分ける方法もあります(編集部の考え方)。等級の呼び名と中身の違いは抹茶のグレードの違い、お菓子の用途ごとの選び方はお菓子に使う抹茶の選び方にあります。
1個の抹茶代の計算
1個の抹茶代は「1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 ×(1個の生地の抹茶 + 1個のまぶす抹茶)」で出せます。三重県のレシピなら、生地の抹茶は1人分0.5gです(編集部の計算)。小さじで書かれたレシピを使う場合は、店で小さじ1の抹茶を量ってgに直してから式に入れます。
粉・砂糖・あん・きな粉・容器の代金も1個あたりに割って足し、その日に売り切れずに捨てた分も原価に入れます。抹茶の値段の決まり方は抹茶の値段はどう決まるのかにまとめています。
参考にした情報
- 農林水産省「米粉の種類と特性」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/08/rice_flour_charac_teristic_01.html
- 農林水産省「米粉の種類と特性(米粉の用途)」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/08/rice_flour_charac_teristic_04.html
- 農林水産省東海農政局「米粉の種類と用途」 https://www.maff.go.jp/tokai/seisan/shinko/komeko/type.html
- 農林水産省「にっぽん伝統食図鑑 わらびもち」 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/menu/warabimoti.html
- 三重県「伊勢茶わらび餅」 https://www.pref.mie.lg.jp/NOAN/HP/m0110400060_00043.htm
- 埼玉県「狭山茶を使った抹茶の白玉あんみつ」 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0902/wassyoi/recipe/47.html
- 東芝ライフスタイル「抹茶クリーム大福」 https://www.toshiba-lifestyle.com/jp/microwaves/recipes/detail/609/
- 明治「抹茶白玉アイス」 https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/shokuikurecipe/recipe/0007.html
- 消費者庁「コラムVol.5 冬に増加する高齢者の事故に注意! 餅による窒息」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20231227/
- 東京消防庁「餅などによる窒息事故に注意!」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/mochi.html
- 農研機構「もちの硬化性とアミロペクチン構造の関連」 https://www.naro.go.jp/PUBLICITY_REPORT/publication/archive/files/H13digest-33.pdf
- 長谷川摂ほか「短鎖アミロペクチン米を利用した求肥の低温における物性の特性評価」日本食品科学工学会第71回大会講演要旨集(2024) https://www.jstage.jst.go.jp/article/aamjsfst/71/0/71_97/_article/-char/ja
- My/Mo「Matcha Green Tea」 https://www.mymochi.com/mochi-flavors/green-tea/
- シンガポール食品庁「Food Allergy & Intolerance」 https://www.sfa.gov.sg/food-safety-tips/food-risk-concerns/food-allergy-intolerance
- タイ保健省告示第450号(タイ食品医薬品局による非公式の英訳) https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=657392349080592384&name=P450_EN.pdf
- 米国食品医薬品局「Food Allergies」 https://www.fda.gov/food/nutrition-food-labeling-and-critical-foods/food-allergies
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」ハンドブック(令和8年4月) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_260401_02.pdf
























































































