オーガニック抹茶は、カフェのメニューやプライベートブランドで「organic」と書けることから、仕入れの問い合わせでよく名前が挙がります。ただ、日本で「有機」と名乗れる抹茶でも、詰め替えたり、別の国で売ったりすると、そのまま「organic」と書けるとは限りません。この記事では、仕入れる側が確かめることを、有機JASマークと認証書の見方、詰め替えのルール、輸出先ごとの表示の条件、値段と検査書類の順に見ていきます。有機JASの栽培の条件や、茶畑を有機に切り替える話は、生産者向けの有機抹茶とはで取り上げています。
オーガニック抹茶(有機抹茶)とは
日本で「有機」「オーガニック」と表示できる抹茶は、有機JASマークが付いたものだけです。有機抹茶とオーガニック抹茶は同じもので、どちらの呼び方にも同じ表示のルールがかかります。
有機JASマークがない抹茶は「有機」と書けない
農林水産省によると、有機JAS(日本農林規格の有機の基準)に合った生産をしていることを登録認証機関が検査し、認証された事業者だけが有機JASマークを付けられます。マークのない農産物や加工食品に「有機」「オーガニック」などと表示することは、法律で禁じられています。
出典: 農林水産省「有機食品の検査認証制度」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
碾茶と抹茶で認証が分かれる
有機JASでは、抹茶は加工食品として扱われます。茶畑と碾茶(てんちゃ:抹茶の原料になる茶葉)が有機農産物の認証を受けていても、碾茶を挽いて抹茶にする工場が有機加工食品の認証を受けていなければ、できた抹茶に有機JASマークは付けられません。仕入れでは、茶畑から抹茶に挽く工場まで、認証が途切れずに続いているかを確かめます。
有機JASマークの見方
有機JASマークには、認証した機関の名前が入ります。マークの近くの認証機関名と認証番号から、誰がどの事業者を認証したかをたどれます。
マークに入っているもの
農林水産省の「格付の表示の様式」では、有機JASマークに登録認証機関の名前(略称でもよい)を入れることになっています。認証番号は、包装や送り状のほかの表示で事業者が分かる場合は省けます。マークは包装の1個ごとの見やすい場所か、送り状に付けます。業務用の大袋で届く抹茶では、送り状の側にマークがある場合もあります。
「USDA」「EU」のマークとの関係
有機の同等性(後の見出しで説明)を使って米国・カナダ・EUに輸出する製品に相手の国の有機のロゴを付けるには、日本の登録認証機関から「外国格付表示業者」の認証を受ける必要があります(2022年10月から)。相手の国の制度で認証を受けている事業者は、その制度に沿ってロゴを付けられます。日本の抹茶にUSDAなどのロゴが付いていれば、どちらの認証によるものかを仕入れ先に確かめます。
認証書の確かめ方
認証書では、事業者の名前、品目が有機加工食品か、工場の名前と所在地の3点を見ます。そのうえで、農林水産省が公開している一覧と照らします。
認証書に書かれていること
農林水産省の有機加工食品のハンドブック(2026年6月版)によると、認証書には次の事項が書かれています。
- 認証を受けた事業者の名称と所在地
- 生産行程管理者(作る工程を管理する事業者)の認証であること
- 農林物資の種類(抹茶なら「有機加工食品」)
- 認証を受けた工場の名称と所在地(委託先を含む)
- 認証の年月日と認証番号
見積もりをくれた会社と認証書の事業者が違う場合は、その会社が商社なのか、認証を受けた工場に製造を頼んでいるのかを聞いておきます。
有効期限はない。年1回の調査を見る
同じハンドブックは、認証は取り消されない限り有効で、認証機関が年1回以上調査すると説明しています。認証書の日付が古くても失効したことにはなりませんが、今も認証が続いているかは別に確かめます。合併や買収で会社が変わった場合は、認証を取り直す必要があります。
農林水産省の一覧と照らす
農林水産省は、次の一覧を公開しています。
| 一覧 | 分かること |
|---|---|
| 有機登録認証機関一覧 | 認証機関の名前・所在地・電話番号、輸出証明書を出せるか(国内の機関) |
| 有機JAS認証事業者一覧(国内・外国、2026年8月現在) | 認証を受けている事業者 |
| 既に登録の効力を失った登録認証機関等の略称 | 今はない機関の略称が入ったマークが、どの機関のものか |
認証書の機関名が登録認証機関一覧にあるか、事業者が認証事業者一覧にあるかを照らします。一覧の時点より後の変更は、認証書に書かれた認証機関に問い合わせて確かめます。
詰め替え・ブレンド・窒素充填で要る認証
有機の抹茶を小分けして自分のラベルを貼るなら、その作業をする事業者も認証を受けている必要があります。認証のない事業者が詰め替えると、有機JASマークは付け直せません。
小分けしてマークを付け直す
農林水産省の有機JASのQ&Aは、小分けを「一度区分したものを更に小さく区分すること」と説明し、小分けした物にJASマークを再び付ける事業者を「認証小分け業者」と呼んでいます。1kgの袋を100gの缶に詰め替え、缶に有機JASマークを付けて売るなら、その作業をする事業者が小分け業者の認証を受けます。
ブレンドと窒素充填は有機加工食品の認証が要る
同じQ&Aは、茶をブレンドして味を良くする場合は加工とみなし、有機加工食品の認証が要るとしています。茶の包装で袋に窒素を入れる窒素充填も、食品添加物の添加に当たるため、小分け業者の認証ではできず、有機加工食品の認証が要るとしています。2つの産地の抹茶を合わせた自社ブレンドや、窒素を入れた小袋を「有機」で売りたい場合は、作業を頼む工場が有機加工食品の認証を持っているかを確かめます。
出典: 農林水産省「有機農産物、有機加工食品、有機畜産物及び有機飼料のJASのQ&A(令和7年10月現在)」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-543.pdf
海外で詰め替える場合
日本の有機JASのルールは、日本の認証の話です。仕入れた抹茶を海外の自店で小分けして「organic」と書く場合は、売る国の表示のルール(次の2つの見出し)に従います。プライベートブランドの包装とラベルの決め方は、抹茶をプライベートブランドで作るにはで取り上げています。
日本と有機の同等性がある国・ない国
日本の有機JASがそのまま相手の国の有機として扱われるのは、同等性を結んだ6つの国・地域です。シンガポール・タイ・インドネシアは入っていません。
同等性を結んだ国・地域
農林水産省によると、2026年4月1日現在、日本と有機の同等性を相互に認めているのは米国、EU、カナダ、台湾、英国、スイスです。農産物と農産物加工食品はどこも対象です。同等性を使って輸出するときは、輸出証明書を出せる登録認証機関から認証を受けている必要があります。
同等性がない国では
農林水産省は、同等性がない国に「有機」と表示して輸出するには、その国の有機の認証を受ける必要があると説明しています。一方で、豪州やニュージーランドのように、同等性がなくても日本の制度で認証された有機食品を輸出できる国もあるとしています。シンガポール・タイ・インドネシアがどちらに当たるかは、各国の決まりで確かめます。
シンガポール・タイ・インドネシアで「organic」と書く条件
3つの国とも、ラベルに「organic」と書くには、根拠になる認証の書類が要ります。ただし、どの認証を認めるかの決め方は国ごとに違います。
シンガポール
シンガポール食品庁(SFA)の表示ガイドは、「organic」などと表示する食品には、国際食品規格(Codex)の有機の指針の6.3節に合う検査・認証の仕組み、またはそれと同等の仕組みで認証されたことを示す証明書を付けるとしています(食品規則9条5項)。このガイドには、有機JASの認証書を受け入れるかどうかを国ごとに示した一覧は載っていません。仕入れる前に、輸入者として認証書の写しを受け取り、SFAへの説明に使えるようにしておきます。
タイ
タイの農産物規格TAS 9000-2021(มกษ. 9000-2564、農業協同組合省の国家農産物・食品規格局が定める有機農業の規格)は、「อินทรีย์(有機)」「ออร์แกนิก」「organic」と表示できる条件を挙げています。原料が有機の方法で作られていることに加え、作ったり輸入したりする事業者が有機の検査と認証を受けていること、ラベルに認証機関の名前か番号を書くことが条件です。保健省の包装食品の表示の告示(第450号、2024年)には、有機の表示だけを決めた条項は見当たりませんでした。タイで「organic」と書くときは、どの認証機関の認証を使うかを、輸入者が先に決めておきます。
インドネシア
インドネシア農業省の規則(2013年第64号)は、国内で流通する有機の製品は、輸入品も含めてOrganik Indonesiaのロゴを付けるとしています。輸入する有機の製品には、生産国の認証機関が出す取引証明書(transaction certificate)と、衛生証明書または自由販売証明書を付けます。この認証機関は、インドネシアの国家認定委員会(KAN)に認められている必要があります(KANの認定、認定機関どうしの取り決め、地域・国際的な協力の取り決めのいずれか)。同じ規則は、詰め替えた有機の製品は、認証を取り直すまでロゴを付けられないとしています。食品医薬品監督庁(BPOM)の表示の規則(2018年第31号)も、有機の加工食品には有機の表示を法令に沿って付けるとしています。2013年の規則なので、輸入の前に今の版を輸入者とともに確かめます。輸入の手続きの全体はインドネシアに抹茶を輸入するにはにあります。
有機と普通の抹茶の値段の差
有機と普通の抹茶の値段の差を示した公的な統計は見つかりませんでした。公的な資料で分かるのは、有機の茶の輸出量と、有機にかかる費用の種類です。
統計で分かること
農林水産省の「茶をめぐる情勢」(2026年10月)では、2025年に米国へ輸出した緑茶4,431トンのうち2,784トン(62.8%)、EU・英国向けの2,393トンのうち1,522トン(63.6%)が、同等性などの仕組みを使って輸出した有機の茶でした。量の統計はありますが、有機だけの単価は出ていません。抹茶の値段の決まり方は抹茶の値段はどう決まるのかで取り上げています。
費用がかかるところ
公的な資料が示しているのは、値段そのものではなく費用のかかり方です。農研機構の資料は、有機栽培には認証の費用、有機質の肥料代、草取りの人手がかかるとしています。有機の茶畑が多い鹿児島での有機の碾茶の手間は、鹿児島の抹茶とはで取り上げています。見積もりを比べるときは、同じ産地・茶期・挽き方で、有機とそうでないものを並べて出してもらうと差が分かります。
有機でも検査書類は要る
有機JASは育て方と作り方の基準で、残留農薬がゼロであることの保証ではありません。輸入する国の基準に合うかは、検査書類で確かめます。
残留ゼロは保証されない
農林水産省の有機JASのQ&Aは、一般的な環境汚染があるため、有機農産物に全く残留がないことは保証できないとしています。残留農薬や重金属が輸入する国の基準に収まっているかは、有機の認証とは別に、分析の結果で確かめます。
そろえる検査書類
抹茶の分析証明書(COA)で、残留農薬・重金属・微生物・放射性物質の項目を、輸入する国の基準と並べて見ます。読み方は抹茶の分析証明書(COA)の読み方、鉛の基準は抹茶に鉛は含まれるのかにあります。
仕入れ先に頼む書類と確かめる順番
有機の抹茶を仕入れるときは、認証書の写し、ロットごとのCOA、出荷の書類の3つをそろえます。見積もりの前に頼んでおくと、比べるのが楽になります。
頼む書類
| 書類 | 見るところ |
|---|---|
| 有機JASの認証書の写し(農産物・加工食品) | 事業者名・品目・工場・認証番号 |
| 小分け・ブレンドをした事業者の認証書 | 小分け業者か、有機加工食品か |
| ロットごとのCOA | 残留農薬・重金属・微生物の結果と検査機関 |
| 送り状・包装の表示 | 有機JASマークと認証機関名 |
| 輸出先の認証や証明書(ある場合) | 対象の国と品目 |
確かめる順番
- 自店で「organic」と書く国の決まりを確かめる(シンガポール・タイ・インドネシア)
- 仕入れ先から認証書の写しをもらい、茶畑から抹茶の工場まで続いているかを見る
- 認証機関と事業者を農林水産省の一覧と照らす
- 詰め替え・ブレンド・窒素充填をする工程に、必要な認証があるかを見る
- ロットのCOAを輸入する国の基準と並べる
卸での仕入れ全体の流れは抹茶を卸で仕入れる方法にまとめています。Omakase Matchaで扱う抹茶のうち有機に関わる商品は、有機(オーガニック)の抹茶の一覧にまとめています。認証の状況は商品ごとに違うため、サンプルや見積もりの段階で認証書の写しを確かめてください。
参考にした情報
- 農林水産省「有機食品の検査認証制度」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
- 農林水産省「有機農産物、有機加工食品、有機畜産物及び有機飼料のJASのQ&A(令和7年10月現在)」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-543.pdf
- 農林水産省「有機加工食品検査認証制度ハンドブック(令和8年6月版)」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-570.pdf
- 農林水産省「有機農産物,有機飼料,有機畜産物及び有機加工食品の格付の表示の様式及び表示の方法」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-467.pdf
- 農林水産省「令和4年10月1日から有機同等性を利用して有機製品を輸出する際のルールが変わります。」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-262.pdf
- 農林水産省「有機認証制度の同等性について」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-555.pdf
- 農林水産省「有機登録認証機関一覧」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki_kikan.html
- 農林水産省「認証事業者一覧」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_business_operators.html
- 農林水産省「既に登録の効力を失った登録認証機関等の略称」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/ryakushou.html
- 農林水産省「茶をめぐる情勢(令和8年10月)」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/attach/pdf/ocha-201.pdf
- 農研機構 果樹茶業研究部門「茶の有機栽培における主要な4つの課題とその対策の現状」(2025年3月18日) https://www.maff.go.jp/kyusyu/keiei/zigyo/yukicha/20250318yuki5.pdf
- Singapore Food Agency “A Guide to Food Labelling and Advertisements” https://www.sfa.gov.sg/docs/default-source/food-manufacturing-and-storage/a-guide-to-food-labelling-and-advertisements.pdf
- タイ国家農産物・食品規格局「TAS 9000-2021 เกษตรอินทรีย์ : การผลิต การแปรรูป การแสดงฉลาก และการจำหน่าย ผลิตผลและผลิตภัณฑ์อินทรีย์」(タイ農業局掲載) https://doa.go.th/oard5/wp-content/uploads/2024/02/03-3-og.pdf
- タイ保健省告示第450号(2024年)包装食品の表示 https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=654869394207416320&name=P450.pdf
- インドネシア農業省規則2013年第64号「有機農業システム」 https://peraturan.bpk.go.id/Download/152945/Permentan%20Nomor%2064%20Tahun%202013.pdf
- インドネシア食品医薬品監督庁規則2018年第31号「加工食品の表示」 https://peraturan.go.id/files/bn1347-2018.pdf
























































































