複数の卸から抹茶のサンプルを取り寄せると、どれにも「プレミアム」「セレモニアル」と書かれていて、名前では違いが分からないことがあります。日本の茶の品評会や茶業研究所の審査の見方と研究の数字を知っておくと、サンプルを中身で比べられます。
抹茶の品質とは:良い抹茶の条件
良い抹茶は、さえた鮮やかな緑で、粉が細かくそろい、泡が細かく長もちし、口当たりが滑らかで旨味と覆い香が調和しています。京都府茶業研究所の抹茶の審査は、この色沢・粒度・泡立ち・泡色・滋味の5項目で品質を見ています。
審査で見る5つの項目
元京都府茶業研究所の村上宏亮氏が茶業研究報告(日本茶業学会の学術誌)にまとめた抹茶の審査では、次の5項目を調べます。
| 項目 | 見るところ | 良いものの条件 |
|---|---|---|
| 色沢(しきたく) | 粉の色とつや | さえがある(鮮やかな緑が引き立つ色) |
| 粒度 | 粉の細かさ | 細かく、そろっている |
| 泡立ち | 点てたときの泡 | よく泡立ち、泡が細かく、長もちする |
| 泡色 | 泡の色 | 粉と同じように、さえがある |
| 滋味(じみ) | 味と口当たり | 滑らかで、旨味・覆い味と挽いた香りが調和している |
覆い味・覆い香は、摘む前に日光をさえぎって育てた茶葉に出る、海苔に似た香りと味です。
品質の大部分は、粉にする前に決まっている
村上氏は、抹茶の品質の良し悪しは、基本的に粉にする前の碾茶(てんちゃ:抹茶の原料になる茶葉)の段階までに決まっているとしています。品質にいちばん影響するのは覆いのかけ方などの育て方で、挽き方だけでは決まりません。
「セレモニアル」「カリナリー」などの呼び名には公的な基準がありません。呼び名と中身の関係は抹茶のグレードの違いに、粉末茶やラテミックスとの違いはPure matcha(ピュア抹茶)とはにまとめています。
日本の茶業界は品質をどう審査しているか
日本の茶は、審査員が見た目・香り・色・味を点数にする「官能審査」で品質を決めています。全国茶品評会では、碾茶を香気65点・滋味65点・外観40点・水色20点・から色10点の200点満点で審査します。
全国茶品評会の碾茶の配点
全国茶品評会は、全国茶生産団体連合会などが毎年開く荒茶(あらちゃ:仕上げ前のお茶)の品評会で、碾茶の部もあります。配点は茶の種類ごとに決まっていて、農研機構の解説(2006年)と第69回(2015年)の審査要領のどちらでも、碾茶は次の配点です。
出典: 農研機構 野菜茶業研究所 山口優一「日本茶の品質評価の現状と展望」 https://www.naro.go.jp/PUBLICITY_REPORT/publication/archive/files/vt_s_3_5-2.pdf
水色(すいしょく)はお湯に浸した液の色、から色はお湯に浸したあとの茶葉の色で、から色を審査するのは碾茶だけです。2025年の関西茶品評会(関西の府県などが開く地域の品評会)の審査規程も碾茶は同じ配点で、2026年に佐賀県で開かれた第80回全国茶品評会も200点満点で審査されました。
欠点を見つけて点を引く
農研機構の解説によると、茶の審査は理想的な茶を満点とし、欠点に当てはまるものを引いていく減点法です。審査で使う言葉の多くは欠点を表す言葉で、第78回全国茶品評会の碾茶の審査結果にも「染まり不足」「葉傷み臭」「水色の黄色み」「こげ味」「覆い味不足」などが並びます。
欠点にはそれぞれ原因があります。農研機構が煎茶と玉露についてまとめた表では、赤みは摘んだ葉の扱いや保管の問題、硬葉臭(硬くなった葉のにおい)は摘む時期が遅かったことで出るとされています。欠点の言葉は、そのまま仕入れ先に原因を聞くときの言葉になります。
審査の条件をそろえる
品評会は、公平に審査するための条件を決めています。
- 試料は3gを量り、熱湯を注いで、碾茶は5分浸してから色と味を見る
- 審査番号を審査員に伏せ、誰の茶か分からないようにする
- 外観から審査を始める
- 審査用の水のpHと硬度を事前に知らせる
農研機構の解説は、外観と水色は光の条件で色の見え方が大きく変わるため、採光に注意が必要としています。カフェで比べるときも同じです。
色で見分ける
良い抹茶の色は、鮮やかな緑が引き立つ「さえ」のある色です。赤黒み・青黒み・黄色み・白みは欠点です。
色の欠点と原因
村上氏の資料による、抹茶の色の欠点と原因です。
| 色の欠点 | 主な原因 |
|---|---|
| 赤黒み | 覆いが足りなかった、葉が傷んだ、保存中に変質した |
| 青黒み | 硬くなった新芽を使った、蒸しが足りない、粒が粗い |
| 黄色み | 覆いが足りない、葉が硬くなった(品質の落ち方が大きい) |
| 白み | 挽きすぎ。茶の本来の色が薄く、赤みを伴うこともある |
| 変色(退色) | 保存の影響で緑があせ、赤みや赤黒みを帯びる |
色は値段・茶期とつながっている
色は色相角度(しきそうかくど:色が黄から緑のどこにあるかを示す数字で、大きいほど緑が強い)で測れます。村上氏の資料では、国内の市販抹茶74点(1kg 6,000〜270,000円)を審査したところ、見た目の順位が上のものほど色相角度が大きくなっていました。
静岡県立大学の中村順行氏の調査では、静岡県産の抹茶の色相角度は一番茶が106.76、二番茶が104.45、秋冬番茶が102.16で、茶期(その年の何回目に摘んだ茶か)が進むほど緑が弱くなっていました。長崎県が早生の3品種を比べた試験でも、一番茶の抹茶は116.3〜119.1、二番茶は111.8〜113.0(3年の平均)で、同じ傾向でした。試料と測り方が研究ごとに違うため、研究どうしで数字そのものは比べられません。
色は品種や育て方でも変わる
加工用の碾茶で品種を比べた鹿児島県の試験では、葉緑素が多く、葉の薄いものほど抹茶は濃い鮮緑になり、「おくみどり」の色が優れていました。直接覆いをかけた碾茶を使った愛知県の試験では、覆いの遮光率が高いほど色相の値が高くなり、審査の点数も上がりました。
品種や産地の違うサンプルどうしでは、色の差がそのまま品質の差とは限りません。
粉の細かさで見分ける
品質の良い抹茶は、粒が細かく、大きさがそろっています。ただし細かさだけでは品質は決まりません。
紙の上で伸ばして見る
京都府茶業研究所の審査では、白い紙(薬包紙)に2gを量り取って見たあと、へら(スパーテル)で押さえながら引き伸ばします。
- 細かいもの:へらが滑るようによく伸び、伸ばした面はさえた色になる
- 粗い・不ぞろいなもの:砂のようにざらついて青黒く見え、途中でちぎれたように伸びが悪い
- 大きな粒が混ざったもの:押さえた面に粒が見え、引きずった跡が残る
数字で見る粒の大きさ
中村氏は、国内外で買った抹茶の粒の大きさをレーザー光の測定器で調べています。粒の大きさの分布が1つの山になる型は平均15〜17µm、山が2つに分かれる型は39〜53µmでした。国内で売られている日本産では、1つの山の型が100gあたり平均6,902円、2つの山の型が1,572円でした。
村上氏の資料では、国内の市販抹茶74点で、口の中のざらつきの有無を分けた境目が、粒の大きさの中央値(中位径)で16.0µm(マイクロメートル:1mmの1,000分の1)でした。人がざらつきを感じるとされる10〜25µmの範囲に入る値ですが、村上氏はざらつきには中央値以外の要因も関係すると考えています。
細かければ良いとは限らない
同じ74点では、審査の順位が上のものほど粒が細かい傾向がありました。ただし、順位が下のグループにも、上のグループと同じくらい細かいものがありました。村上氏は、粒の大きさは品質の目安になるものの、ほかの特性もあわせて判断する必要があるとしています。
硬くなった新芽を使ったものは、細かく挽いても滑らかな口当たりにならないとされています。
香りと味で見分ける
良い抹茶は、粒が溶けているかのように口当たりが滑らかで、濃い旨味と覆い味に、挽いたときに生まれる香りが調和しています。愛知県の碾茶の試験では、旨味のもとになるアミノ酸が多く、渋みのもとになるタンニン(カテキン類)が少ないものほど、審査の点数が高い傾向でした。
成分の数字と審査の点数
愛知県の試験は、覆いの遮光率を変えて碾茶を作り、審査の点数と成分を比べています。2014年は、遮光率85%の碾茶が100点満点で96点、70%の碾茶が85点で、アミノ酸は2.6%と1.4%、タンニンは9.6%と11.1%でした。
出典: 愛知県農業総合試験場研究報告49「スキャナーとフリーソフトを利用したてん茶の葉色簡易測定法」 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/258417.pdf
旨味のもとのテアニンと値段の関係は抹茶のグレードの違いにまとめています。
成分だけで味は決まらない
農研機構の解説は、煎茶のアミノ酸などの成分は品質の指標として有効でも、味をすべて説明できるとは限らないとしています。成分が同じ茶葉でも、製茶の条件で渋みに大きな差が出ることが多いためです。成分の数字は目安にし、最後は自分の舌で比べます。
挽き方で香りが変わる
抹茶特有の香りは、碾茶を挽くときに生まれます。村上氏の資料によると、挽臼(ひきうす)は50℃前後に温まるのが標準で、60℃まで温めて挽いたものは香りが薄く、味も淡白になりました。挽きすぎると、香りが抜けたり、焦げたような苦みが出たりすることがあります。
カフェでサンプルを並べて比べる手順
サンプルは、同じ量・同じお湯・同じ時間・同じ照明で並べ、どれか分からないように番号を付けて比べます。下の手順は、京都府茶業研究所の審査方法と品評会の決まりをもとに、編集部がカフェ向けにまとめたものです。
準備
- サンプルごとに番号を付け、比べる人には産地や値段を伏せる(品評会でも審査番号は審査員に伏せる)
- 一度に比べるのは10点程度まで(村上氏の資料による)
- 窓際など明るさが変わる場所を避け、同じ光の下で見る
粉の色と細かさを比べる
- 白い紙の上に、各サンプルを2gずつ並べる
- 並べた状態で、緑のさえ、赤み・黄色み・白みがないかを見る
- スプーンの背で押さえて伸ばし、伸び具合、ざらつき、粒の跡を見る
お湯で点てて比べる
- 茶碗に2gを入れ、熱湯100mlのうち少量を注いで、茶筅でかたまりがないように練る
- 残りのお湯を注ぎ、20秒点てる
- 大きな泡をつぶして表面を整え、泡の量・細かさ・色を見る
- 数分後に泡がどれだけ残っているかを見る
- 粒が沈むので、スプーンでかき混ぜてから口に含み、滑らかさ・旨味・渋み・香りを比べる
店で出す湯温(80℃前後。抹茶の点て方)でも点てると、実際の一杯に近くなります。
ミルクで割って比べる
ラテに使うなら、店のレシピと店で使うミルク(牛乳・オーツミルク・豆乳など)で作って比べます。作りたてと10分後に、色と抹茶の味がどれだけ残るかを見ます。ラテ向けの選び方と1杯の原価はカフェの抹茶ラテに使う抹茶の選び方にまとめています。
劣化した抹茶のサイン
劣化した抹茶は、鮮やかな緑があせて赤みや赤黒みを帯び、抹茶特有の香りが弱くなります。
色と香りの変化
村上氏の資料は、保存条件などの影響で緑があせ、赤みや赤黒みを帯びたものを「変色(退色)」とし、抹茶特有の香りが足りなくなる原因に、挽いてからの時間の経過と保存条件の悪さも挙げています。
届いたときに確かめること
- 袋や缶が密封され、膨らみや破れがないか
- 前のロットと並べて、色が赤みを帯びていないか
- 開けたときに覆い香があり、ほかのにおいが移っていないか
暑い国での保管の方法は抹茶の賞味期限と保存にまとめています。
抹茶の見分け方でよくある誤解
色が明るい・泡が多い・値段が高い、のどれか1つだけで品質は決まりません。研究の結果を見ると、どれにも例外があります。
色が明るいほど良い
抹茶は細かく挽くほど明るく見え、挽きすぎると白みを帯びて欠点になります。愛知県の試験でも、遮光を弱めて作った碾茶のほうが明るさが高くなった年がありました。中村氏が国内外で買った抹茶を価格帯別に平均した表では、100gあたり1,000円以下の帯の明るさが最も高くなっていました。見るのは明るさではなく、緑の強さです。
泡がたくさん立てば良い
村上氏の資料によると、硬くなった新芽を使った抹茶も、一度はよく泡立つことがあります。ただし泡は粗く不ぞろいで、すぐに減ります。泡は量より、細かさとどれだけ長もちするかで見ます。茶筅の動かし方でも泡は変わるため、比べるときは点てる人と時間をそろえます。
値段が高いほど良い
中村氏は、国内外で売られている日本産の抹茶について、色の数値はある価格帯から上では頭打ちになり、高い値段の理由にはブランドの力も多いとしています。抹茶の値段が何で決まるかは抹茶の値段はどう決まるのかにまとめています。
仕様書・分析証明書で確かめる項目
サンプルの比較と一緒に、仕入れ先の仕様書と分析証明書(COA:ロットごとの検査結果)で中身を確かめます。
仕様書で確かめる項目
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 原料 | 碾茶を挽いたものか(粉末茶ではないか) |
| 茶期 | 一番茶だけか、二番茶以降を含むか |
| 産地・品種 | 府県や地域、品種名が書かれているか |
| 挽き方 | 石臼か、機械か |
| 挽いた日・ロット番号 | いつ挽いたものか分かるか |
| 保存・包装 | どの温度で保管し、どう包装しているか |
色や粒の大きさの測定値を出せるかも聞いておくと、ロットごとのぶれを見るのに役立ちます。検査書類の読み方は抹茶の鉛・重金属と検査書類に、見積もりで確かめることは抹茶を卸で仕入れる方法にまとめています。
書類と現物を突き合わせる
「一番茶」なのに黄色みを帯びている、「石臼挽き」なのにざらつく、といった食い違いがあれば、審査の欠点の言葉(赤黒み、黄色み、粗い、覆い味不足など)で仕入れ先に理由を聞きます。
Omakase Matchaのサンプル
Omakase Matchaは、宇治・八女・鹿児島・静岡・宮崎の産地から直接仕入れた抹茶を扱っています。サンプルは3種類までお送りしていて、注文は1kgから受け付けています。お店のメニューに合わせた配合の調整や、シンガポール・タイのお店への訪問もしています。商品ごとに出す書類は品質・書類にまとめています。
参考にした情報
- 農研機構 野菜茶業研究所 山口優一「日本茶の品質評価の現状と展望」(野菜茶業研究集報 第3号、2006年) https://www.naro.go.jp/PUBLICITY_REPORT/publication/archive/files/vt_s_3_5-2.pdf
- 村上宏亮「抹茶の審査について」(茶業研究報告 134号、2022年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha/2022/134/2022_31/_pdf
- 第69回全国茶品評会 開催要領・審査要領(2015年) https://shizuoka-cha.lolipop.jp/69ocha-fes/gaiyou/pdf/69_zenkoku_cha_hinpyokai_kaisai_youryo.pdf
- 第78回全国茶品評会 てん茶審査結果(静岡県) https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/062/929/tencha.pdf
- 京都府「京都府の出品茶が農林水産大臣賞と産地賞を獲得 ~第80回全国茶品評会の結果について~」(2026年8月28日) https://www.pref.kyoto.jp/press/documents/2026082801.pdf
- 京都府「第77回関西茶業振興大会京都府大会 開催要綱要領集」(2025年) https://www.pref.kyoto.jp/nosan/documents/youkou.pdf
- 中村順行「国内における抹茶(碾茶)生産の推移と科学的特性」(静岡県立大学 茶学総合研究センター) https://dfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/labs/tsc/thesis/0410.pdf
- 愛知県農業総合試験場研究報告49「スキャナーとフリーソフトを利用したてん茶の葉色簡易測定法」(2017年) https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/258417.pdf
- 長崎県農林技術開発センター「茶早生品種『さきみどり』は抹茶の色が優れる」(2020年度) https://www.pref.nagasaki.jp/e-nourin/nougi/theme/result/R2seika-jouhou/shidou/S-02-45.pdf
- 鹿児島県農業開発総合センター「炒蒸機とネット型乾燥機を用いて製造した加工用てん茶・抹茶の品種別色の特徴」 https://www.pref.kagoshima.jp/ag11/pop-tech/nenndo/documents/56364_20201113082445-1.pdf
























































































