カフェや菓子店で「業務用 抹茶」と探すと、1kgや500gの袋がたくさん出てきます。ただ、同じ「抹茶」の名前でも、抹茶だけの粉と、砂糖や粉乳が入ったラテ用の粉が並んでいて、1杯に使う量も原価もまったく違います。袋の裏の表示を読めば、中身はかなりの部分まで見分けられます。この記事では、表示の決まりを公的な資料で確かめたうえで、ラテ用・製菓用の選び方、1kg袋の保存、見積もりで確かめることを順にまとめました。海外への輸出を前提にした卸の仕入れは、抹茶を卸で仕入れる方法にまとめています。
業務用抹茶とは:袋の中身は2種類
業務用として売られている抹茶の袋は、抹茶だけの粉と、砂糖や乳製品を混ぜた抹茶ラテパウダーに大きく分かれます。どちらも1kgや500gの袋で売られていますが、使い方と表示の読み方が違います。
抹茶100%の粉
抹茶だけを袋に詰めたものです。日本茶業中央会の「緑茶の表示基準」(業界の自主基準、2026年7月10日最終改正)では、抹茶を「碾茶(てんちゃ:覆いをかけて育て、揉まずに乾かした茶葉)を茶臼等で微粉末状に製造したもの」と定義しています。煎茶などを粉砕機で粉にしたものは「粉末茶」で、抹茶とは別の名前です。
甘さもミルクも入っていないので、ラテ、ストレート、焼き菓子、アイスなど、店で配合を決めて使えます。
抹茶ラテパウダー(加糖・ミルク入り)
抹茶に、砂糖、デキストリン(でんぷんを分解した粉)、粉乳、植物油脂などを混ぜた粉です。お湯や牛乳に溶かすだけで味が決まるので、作り手による差が出にくくなります。業界の緑茶の表示基準は茶の名前を決めたもので、砂糖や粉乳を混ぜた粉はその名前に入りません。ほかの加工食品と同じく、食品表示基準に沿って表示されます。
どちらを選ぶかで、ラベルの見方、1杯の量、原価の出し方が変わります。
原材料表示の読み方
袋の裏の一括表示では、名称・原材料名・原料原産地名の3か所を見ると、抹茶だけの粉かどうかが分かります。原材料は重量の多い順に並ぶので、「抹茶」が何番目にあるかで、ほかの原材料より多いか少ないかも分かります。
名称と原材料名
緑茶の表示基準は、抹茶の袋の原材料名を「茶」または「緑茶」と書くよう決めています。つまり、抹茶100%の袋でも、原材料名の欄は「抹茶」ではなく「緑茶」です。抹茶かどうかは、原材料名ではなく名称の欄で見ます。
出典: 日本茶業中央会「緑茶の表示基準」 https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
同じ基準は、食品添加物を原則として使わないこと、使った原材料は重量の多い順に食品と添加物を分けて書くことも決めています。抹茶だけの袋なら、原材料名は「緑茶」か「茶」の1つだけで、添加物はありません。
原料原産地名
消費者庁によると、2017年9月から、国内で作られる全ての加工食品で、重量の割合が一番多い原材料の原産地の表示が義務になりました。準備期間は2022年3月31日までで、2022年4月以降に売られる業務用の加工食品も対象です。
- 抹茶だけの袋:国産なら「国産」か都道府県名、輸入品なら原産国名が書かれる(緑茶の表示基準)
- ラテパウダーで一番多い原材料が砂糖などの加工品の場合:「国内製造」「○○製造」のように、作られた場所が書かれる
消費者庁は、「国内製造」は日本で作られたという意味で、もとの原料が国産という意味ではないと説明しています。抹茶の産地を知りたいときは、原料原産地名の欄だけでなく、仕入れ先の規格書(商品の中身と表示をまとめた書類)で確かめます。
茶の表示は業界の自主基準で決まっている
コーヒーには、景品表示法にもとづいて業界が決める公正競争規約(表示のルール)があります。消費者庁の業種一覧(2023年3月22日現在)を見ると、食品の表示の規約にコーヒー飲料等とレギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーは載っていますが、茶はありません。茶の表示は、食品表示法の食品表示基準と、日本茶業中央会の緑茶の表示基準で決まっています。
緑茶の表示基準は、根拠のない「最高」「特上」「極上」などの表示や、茶はもともと添加物を使わないのに「無添加」と書いて他より優れて見せる表示を、不当な表示に挙げています。
「抹茶」「緑茶」「抹茶入り」「宇治抹茶使用」の違い
「抹茶」は、黒糖と同じく一般的な名前として扱われるため、割合を書く決まりはありません。一方、産地や銘柄の名前を付けて「使用」と書くなら、100%でなければ割合を書く必要があります。
「抹茶」は一般的な名前
消費者庁の食品表示基準Q&A(加工-204)は、黒糖を砂糖の中の一般的な名前とし、同じ例に抹茶を挙げています。黒糖以外の砂糖も使っているのに「黒糖」とだけ書くと、使った砂糖が全部黒糖だと受け取られるおそれがあるため、誤解を与えない書き方が必要だとしています。
出典: 消費者庁「食品表示基準Q&A」第2章 加工食品 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_261001_12.pdf
ラテパウダーの原材料に「粉末茶」「緑茶エキスパウダー」と「抹茶」が別々に書かれている場合は、抹茶以外の茶の原材料も入っているということです。
「抹茶入り」は茶の種類で意味が変わる
茶葉の商品では、緑茶の表示基準が、違う種類の茶を混ぜた「混合茶」の名前を「〇〇入り××茶」とし、一番重量の多いお茶を末尾に書くと決めています。たとえば「抹茶入り玄米茶」なら、一番多いのは玄米茶で、抹茶は少ない方です。
お菓子やラテパウダーで「抹茶入り」と書く場合は、一般的な名前の「抹茶」を入れたという意味になり、割合を書く決まりはありません。
「宇治抹茶使用」は100%でなければ割合を書く
消費者庁のQ&A(加工-202)は、「宇治茶使用」のように銘柄の名前を付けた原材料を「特色のある原材料」とし、同じ種類の原材料に占める割合が100%でないのに「使用」「入り」と書くと、優良誤認(実際よりよく見せる誤解)を与えるとしています。森永乳業の「マウントレーニア 宇治抹茶ラテ」は、商品ページに「宇治抹茶25%使用(抹茶に占める割合)」と書いています。
菓子店がお菓子の袋に「宇治抹茶使用」と書くなら、使った抹茶がすべて宇治抹茶か、割合を書くかのどちらかです。宇治抹茶の定義は宇治抹茶とはに、表示の細かい決まりは抹茶シロップの記事にまとめています。
抹茶ラテパウダーと抹茶100%の違い
公式ページを確かめた業務用の抹茶ラテパウダーでは、原材料の先頭が砂糖類で、1杯に使う粉は抹茶だけで作るラテの4倍以上でした。手間が少ない分、甘さと抹茶の濃さを店で変える余地は小さくなります。
業務用の抹茶ラテパウダーの表示の例
三井農林の業務用ネットショップで売られている「業務用抹茶ラテ 500g」の表示は次のとおりです。
| 項目 | 表示 |
|---|---|
| 名称 | 粉末清涼飲料 |
| 原材料名の先頭 | 砂糖調製品(砂糖、デキストリン)(韓国製造) |
| 茶の原材料 | 粉末茶、緑茶エキスパウダー、抹茶(食品の原材料の最後) |
| 標準使用量 | 1杯14g(140ml) |
| 1袋あたり | 約35杯分 |
| 栄養成分(100gあたり) | 炭水化物74.5g、脂質11.0g、たんぱく質7.6g |
| アレルギー物質 | 乳、大豆 |
| 賞味期間 | 540日 |
1杯14gの炭水化物は、編集部の計算で約10.4gです。乳製品と砂糖をあらかじめ混ぜてあるため、お湯や牛乳で溶かすだけで同じ味が出せます。
抹茶100%で作るラテ
京都の一保堂茶舗の抹茶ラテのレシピは、抹茶3gを80℃のお湯90mlで点て、ミルクや豆乳を注ぎます。ミルクの量は好みで、甘さは店で足します。
| 抹茶100%の粉 | 抹茶ラテパウダー(上の例) | |
|---|---|---|
| 1杯の粉 | 3g(一保堂茶舗) | 14g |
| 甘さ | 店で決める | 粉に入っている |
| ミルク | 店で選ぶ(牛乳・豆乳・オーツ) | 粉乳が入っている |
| アレルギー物質 | 原材料が緑茶だけなら乳・大豆は入らない | 乳・大豆 |
| ほかのメニュー | 焼き菓子・アイス・ストレートにも使える | 主に飲み物 |
どちらが向く店か
抹茶ラテパウダーは、作る人が日によって変わる店や、抹茶ドリンクが少ない店で、味をそろえやすい選び方です。抹茶100%の粉は、甘さを控えたい、牛乳以外のミルクを使いたい、同じ抹茶をお菓子にも使いたい店に向きます。ラテの配合はカフェの抹茶ラテに使う抹茶の選び方、抹茶100%の粉の見分け方はPure matchaとはにあります。
ラテ用と製菓用の選び方
「ラテ用」「製菓用」は売り手が付ける区分で、国の基準はありません。中身の差は、主に原料の碾茶をいつ摘んだか(茶期)と、色・香り・苦みの強さです。
茶期で原料の値段が約2倍違う
農林水産省の「茶をめぐる情勢」(2026年10月)によると、2025年産の荒茶(仕上げる前の茶)の値段は、碾茶の一番茶が1kgあたり10,030円、二番茶が4,950円でした(全国茶生産団体連合会調べ)。原料の段階で、一番茶は二番茶の約2倍です。
静岡県立大学の中村順行氏の論文は、抹茶の使い道が茶道用から菓子用や飲食品の材料に広がり、二番茶期や秋冬番茶期の碾茶が急に増えたという見方を紹介しています。碾茶は茶期によって品質の差も大きいとしています。仕入れるときは、その抹茶がどの茶期の碾茶から作られたかを仕入れ先に確かめます。等級の呼び名の違いは抹茶の等級で詳しく比べています。
ラテに向くもの
南九州市(知覧茶の産地)は、二番茶は一番茶より日の長い時期に育つため、苦み・渋みのもとになるカテキンやカフェインが多く、旨味や甘みが減ると説明しています。二番茶を含む抹茶をラテに使うかは、サンプルを店で使うミルクと甘さで割り、苦みを確かめて決めます。ストレートや、甘さを控えたラテを出すなら、一番茶の割合が高いものから試します。
お菓子に向くもの
抹茶の緑はクロロフィル(葉緑素)の色で、農研機構の研究者らの調査では、クロロフィルがフェオフィチンに変わる割合を茶の色の劣化の目安にしています。クロロフィルは、熱や酸で中心のマグネシウムが抜けると、鮮やかな緑からオリーブ色がかった茶色に変わります。焼き菓子では緑が落ちやすく、アイス、生クリーム、プリンのように加熱が少ないものや、上から振りかけるものは、粉の色がそのまま見えます。焼き菓子と冷たいデザートで同じ抹茶を使うか分けるかは、両方で試作して色と苦みを比べて決めます。色が変わる理由と配合はお菓子に使う抹茶の選び方にまとめています。
1kg袋の保存と使い切り
開けた袋は1か月以内に使い切れる大きさで仕入れ、使う分以外は封を開けずに置きます。抹茶は開けても傷むわけではありませんが、開けたときから鮮度が落ちていきます。
開封後は1か月が目安
一保堂茶舗は、抹茶は開封後も傷まないものの、少しずつ鮮度が落ちるとして、開封後1か月以内に飲むことを勧めています。保存は、光を通さない密閉容器に入れ、香辛料やコーヒーなどにおいの強いものから離して戸棚に置くとしています。袋入りなら、使うたびに巻いてクリップで閉じます。
1kgを使い切るまでの日数
1杯3gのラテだけに使う場合、1kgを使い切るまでの日数は次のとおりです(編集部の計算)。
| 1日の杯数 | 1日に使う量 | 1kgを使い切るまで |
|---|---|---|
| 10杯 | 30g | 約33日 |
| 30杯 | 90g | 約11日 |
| 60杯 | 180g | 約6日 |
1日10杯ほどの店では、1kgを開けると使い切るまでに1か月を超えます。お菓子にも使う店は、1日に焼く台数と1台に使うg数を足して計算します。
小分けと結露に気をつける
使い切れない量を仕入れたときは、届いた袋を開けずに置き、開ける袋を1つずつにします。丸久小山園は、冷凍した抹茶は常温近くまで戻してから開けないと結露して湿ってしまうとし、冷蔵した場合もできるだけ常温近くに戻して使うよう勧めています。冷蔵と常温のどちらがよいか、暑い季節の置き場所は抹茶の賞味期限で詳しく比べています。
1杯・1台の原価の出し方
1杯の抹茶代は「1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 1杯に使うg数」で出します。抹茶100%とラテパウダーでは、1杯に使うg数と、あとから足す材料が違います。
抹茶100%の粉で作る場合
- 抹茶代:1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 3g(一保堂茶舗のレシピの量)
- 足す材料:ミルク代(1本の値段 ÷ 容量 × 1杯の量)と、砂糖・シロップ代
- お菓子:1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 1台に使うg数
抹茶ラテパウダーで作る場合
- 粉代:1袋の値段 ÷ 袋の重さ(g) × 1杯に使うg数(上の例では14g)
- 足す材料:お湯か牛乳の代金
どちらも、これに氷、カップ、ふたの代金を足したものが1杯の材料費です。ラテパウダーは1杯の粉が多いので、1kgあたりの値段だけで抹茶100%の粉と比べず、1杯あたりに直して比べます。1kgあたりの値段がどう決まるかは抹茶の値段はどう決まるのかにまとめています。
見積もり・仕入れで確かめること
見積もりは、袋の中身、書類、届くまでの条件の3つをそろえてから比べます。同じ1kgでも、茶期や配合が違えば別の商品です。
中身と書類
- 名称と原材料名:抹茶100%か、ラテパウダーか。原材料に粉末茶が混ざっていないか
- 原料の産地と茶期:府県名、一番茶か二番茶以降か、合わせている割合
- 賞味期限:製造日からの期間と、届く時点で残っている期間
- 保存方法:開封前の温度の指定があるか
- 規格書:原材料、原料原産地、アレルギー物質、栄養成分などをまとめた書類を出してもらえるか
品質の見比べ方は抹茶の品質の見分け方にまとめています。
値段と条件
- 税込か税抜か、送料が含まれるか
- 最低ロット(1回に買える最小の量)と、袋の大きさ(1kg・500gなど)
- 次の入荷時期と、値段が見直される時期
- 請求書の形式(適格請求書が出るか)と支払い条件
サンプルで比べる
見積もりの前に、候補の抹茶を同じ量・同じミルクでラテにし、店で焼く菓子でも試します。Omakase Matchaは、宇治・八女・鹿児島・静岡・宮崎の産地から直接仕入れた抹茶を1kgから扱い、サンプルは3種類まで取り寄せられます。配合の調整も相談できます。扱っている抹茶はカタログに、抹茶を使ったドリンクの一覧は抹茶ドリンクにあります。
参考にした情報
- 日本茶業中央会「緑茶の表示基準」(2026年7月10日最終改正) https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
- 消費者庁「食品表示基準Q&A」第2章 加工食品 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_261001_12.pdf
- 消費者庁「全ての加工食品に原料原産地が必ず表示されます!」(2022年3月) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/assets/food_labeling_cms202_220330_01.pdf
- 消費者庁「公正競争規約が設定されている業種」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/fair_competition_code/industries
- 三井農林 TEA BREAK「業務用抹茶ラテ 500g」 https://www.mitsui-teabreak.com/shopdetail/000000001655
- 森永乳業「マウントレーニア 宇治抹茶ラテ」 https://www.morinagamilk.co.jp/products/drink/mtr_caffelatte/9065.html
- 一保堂茶舗「抹茶ラテ」 https://www.ippodo-tea.co.jp/blogs/tea-recipe/19%E6%8A%B9%E8%8C%B6%E3%83%A9%E3%83%86
- 一保堂茶舗「How to Keep Your Matcha Fresh」 https://ippodotea.com/blogs/ippodo-tea-blog/how-to-keep-your-matcha-fresh
- 農林水産省「茶をめぐる情勢(令和8年10月)」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/attach/pdf/ocha-201.pdf
- 中村順行「国内における抹茶(碾茶)生産の推移と科学的特性」 https://dfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/labs/tsc/thesis/0410.pdf
- 南九州市「二番茶・三番茶・四番茶・秋冬番茶」 https://www.city.minamikyushu.lg.jp/chirancha/ajiwau/chirancha_shurui/8903.html
- Horie et al. “Comparison of the Chemical Components of Powdered Green Tea Sold in the US” JARQ 52(2), 2018 https://www.jircas.go.jp/sites/default/files/publication/jarq/jarq52-02_143-147.pdf
- 丸久小山園「抹茶について」 https://www.marukyu-koyamaen.co.jp/about-tea/know-matcha.html
- Roberto et al. “The Fate of Chlorophylls in Alkali-Treated Green Table Olives: A Review” Molecules 28(18), 2023 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10534587/
























































































