アイスの抹茶ラテは、抹茶を溶くお湯の量で味と見た目が変わり、氷が溶けると味も薄くなるため、量を決めずに作ると1杯ごとに味がぶれます。この記事では、京都の老舗と日本の大手茶メーカーが公開しているアイス抹茶ラテの配合を比べ、ダマを防ぐ溶かし方、2層の注ぎ方、作り置きの目安、仕込みの手順、1杯の原価までを見ていきます。
アイス抹茶ラテの基本
アイス抹茶ラテは、お湯で溶いた抹茶を、氷と冷たいミルクに注いで作ります。粉のまま冷たいミルクに入れず、先に液体で溶いておくのが、ホットの抹茶ラテとの共通点です。
材料は抹茶・お湯・ミルク・氷・甘味
アイス抹茶ラテの材料は、抹茶、抹茶を溶かすお湯(または水)、ミルク、氷、好みで甘味の5つです。抹茶は、碾茶(てんちゃ:覆いをかけて育て、揉まずに乾かした茶葉)を茶臼などで細かい粉にしたものです。お茶をいれて飲む緑茶と違い、茶葉を粉ごと飲むお茶です。
ラテに使う抹茶の等級の選び方や、ホットの配合はカフェの抹茶ラテに使う抹茶の選び方に、抹茶そのものの点て方は抹茶の点て方にまとめています。この記事は、アイスで変わるところに絞ります。
老舗とメーカーの配合を比べる
一保堂茶舗と伊藤園のアイス抹茶ラテは、どちらも抹茶3gです。違いは抹茶を溶かすお湯の量で、一保堂茶舗は100ml、伊藤園は30mlです。
公式レシピの比較
| 出典 | 抹茶 | 溶かす液体 | ミルク | 氷 | 甘味 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一保堂茶舗(Iced Matcha Latte) | 3g | 80℃のお湯100ml、茶筅で15秒 | 冷たい牛乳100ml | 入れる(量の記載なし) | 記載なし |
| 伊藤園(茶リスタ 小山和裕氏監修) | 3g | お湯30ml(温度の記載なし)を少しずつ入れて練る | 牛乳130g | コップに山盛り | シロップ5〜10g(好みで) |
| 山政小山園(冷抹茶、ミルクなし) | 2g | 少量のぬるま湯で練り、冷水30〜40ml | なし | 浮かべる | 記載なし |
| 丸久小山園(アイス抹茶) | 記載なし | お湯で少し濃いめに点てる | 好みでフレッシュミルクを添える | 浮かべる | 好みでシロップ |
山政小山園の抹茶ラテのレシピはホットで、抹茶2gを温めた牛乳少量で練り、温めた牛乳150ccを加えます。丸久小山園のアイス抹茶は、抹茶をお湯で点てて氷を浮かべる冷たい抹茶で、ミルクは好みで添える扱いです。
出典: 一保堂茶舗「Iced Matcha Latte」 https://ippodotea.com/blogs/recipes-to-brew-japanese-tea/iced-matcha-latte
割合で見ると、違いは「濃さ」
一保堂茶舗は、熱い抹茶とミルクを1対1で合わせると書いています。伊藤園は、お湯30mlに対して牛乳130gなので、ミルクがお湯の4倍強です。抹茶の量は同じでも、伊藤園は溶いた抹茶が一保堂茶舗の3倍ほど濃く、ミルクの割合が多い配合です。一保堂茶舗は、お湯とミルクが同じ量です。
店の基準の決め方(編集部の考え方)
ここからは、上の比較をもとにした編集部の考え方です。抹茶の量は、2社に共通する3gから始めます。お湯の量は、2層に見せたいなら伊藤園の30ml、ミルクを控えめにしたいなら一保堂茶舗の100mlを出発点にし、その間で店のカップの大きさとミルクに合わせて決めます。決めたら、抹茶・お湯・ミルク・氷をすべてgかmlで書いたレシピカードにして、誰が作っても同じ量になるようにします。
冷たいドリンクでダマを防ぐ溶かし方
粉を冷たいミルクに直接入れず、ふるった抹茶を少量の液体で先に溶いてから合わせます。比べた公式レシピのうち、粉を冷たいミルクに直接入れているものはありませんでした。
お湯で溶く(一保堂茶舗・伊藤園)
一保堂茶舗は、抹茶をふるってから80℃のお湯100mlを注ぎ、茶筅(ちゃせん:竹の泡立て器)で15秒点てます。伊藤園は、茶こしで抹茶をふるって茶碗に落とし、お湯を少しずつ入れながら、スプーンを茶碗の側面に当てて練るように混ぜます。茶筅があれば茶筅で練るとしています。伊藤園のやり方は、茶筅がない店でも茶こしとスプーンでできる方法です。
冷たい水で仕上げる(一保堂茶舗・山政小山園)
冷たい水で仕上げる方法も、老舗が公開しています。一保堂茶舗の2つは冷水や氷水だけで溶き、山政小山園は練るときだけ少量のぬるま湯を使います。
- 一保堂茶舗「水点て抹茶」:抹茶2gをふるい、冷水60mlを注いで茶筅で15秒、手早く点てる
- 一保堂茶舗「シャカシャカ抹茶」:抹茶1gをふるい、氷水100mlを注いで振る
- 山政小山園「冷抹茶」:抹茶2gに少量のぬるま湯を注いで茶筅で練り、ダマがなくなってから冷水30〜40mlを注ぐ
山政小山園は2019年の記事で、冷たい温度でも香りが立ちやすいよう火香(ひか:仕上げの火入れで出る香ばしい香り)を強めにした冷用抹茶を、夏季数量限定で売ると紹介しています。冷たい液体で溶かすメニューにするなら、店で使う抹茶を冷水で溶いて香りを確かめてから決めます。
ダマができる理由と、ふるう・練るの細かい手順は、抹茶の点て方の「ダマを防ぐ方法」にまとめています。
2層に見せる注ぎ方
氷とミルクを先にグラスに入れ、濃いめに溶いた抹茶を最後に氷の上から静かに注ぎます。伊藤園は、これを2層にするポイントとしています。
伊藤園の手順
伊藤園の公式レシピの順番は次のとおりです。
- 茶こしで抹茶3gをふるって茶碗に落とす
- お湯30mlを少しずつ入れ、練るように混ぜる
- コップに氷を山盛り入れ、牛乳130gを注ぐ(好みでシロップを入れる)
- 練った抹茶をコップに静かに注ぐ
一保堂茶舗も、冷たい牛乳と氷を入れたグラスに、点てた抹茶を上から注ぐ順番です。2社とも、ミルクが先で抹茶が後です。
出典: 伊藤園「茶リスタ 小山和裕氏監修!本格抹茶ラテ」 https://www.itoen.jp/recipe/45614/
層をきれいに出すためにそろえること
伊藤園が挙げているポイントは、抹茶を濃いめに溶くことと、氷の上からそっと注ぐことの2つです。ここからは編集部の考え方です。店で出すときは、溶くお湯の量・氷の量・注ぐ速さを手順として決め、見本の写真をカウンターに置いておくと、作る人による見た目の違いを減らせます。
層のまま飲むと最初は濃い抹茶か牛乳だけになるため、編集部では、ストローやマドラーを添えて混ぜてもらう出し方を勧めます。
甘味(シロップ)の入れ方
比べた公式レシピで、冷たい抹茶に使っている甘味はシロップです。2層の伊藤園のレシピでは、シロップは抹茶ではなく牛乳の側に入れています。
公式レシピの甘味
伊藤園は、甜菜やきび砂糖のシロップを5〜10g、氷と牛乳を入れたあとに好みで加えています。丸久小山園は、冷たい抹茶に好みでシロップを添えるとしています。山政小山園は、抹茶ラテの甘さは抹茶の風味を楽しむために控えめを勧めています。
メニューでそろえること
ここからは編集部の考え方です。
- 甘さを「なし・控えめ・普通」などで選べるようにするなら、1段階ごとのシロップのg数を決めて、レシピカードに書く
- 層を見せるメニューでは、シロップをミルクに入れてから抹茶を注ぐ(伊藤園と同じ順番)
- オーツミルクなど、もともと甘みのあるミルクを使うメニューは、牛乳とは別にシロップの量を決める
オーツミルクで作るときの抹茶の選び方は、オーツミルクラテに合う抹茶の選び方にまとめています。
作り置きはできるか
溶いた抹茶を何時間置けるかを示した公的な資料は、見つかりませんでした。そのため、食品衛生の一般的な目安に合わせて、冷やして保つか、時間を区切ります。
公的な食品衛生の目安
| 出典 | 目安 |
|---|---|
| シンガポール食品庁(SFA)、ケータリングを頼む人向けの指針 | 病原菌は5〜60℃で速く増える。冷たい食品は5℃未満で保つ。調理してから食べるまで、室温に4時間を超えて置かない |
| 日本の厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」 | 調理後の食品は2時間以内に食べるのが望ましい。調理してから出すまで30分以上かかるもの(温かい状態で出すもの以外)は、10℃以下で保存する |
SFAの目安はケータリングの食事を、厚生労働省のマニュアルは大きな給食施設などを主な対象にしたものです。厚生労働省は、中小規模の調理施設でもこのマニュアルの趣旨を踏まえた衛生管理をするよう求めています。
カフェでの考え方
厚生労働省のマニュアルは、冷蔵設備から出した原材料は速やかに下処理や調理をするよう求めています。ミルクも、冷蔵庫から出したらすぐ使います。溶いた抹茶を作り置きする場合は、編集部では次のように考えています。
- 冷蔵(5℃未満)で保ち、作った時刻を容器に書く
- 置ける時間は、店で時間を変えて作り置きしたものと、作りたてを並べ、色・香り・味を比べて決める
- 室温に置くものは、作ってからの時間がSFAの4時間、厚生労働省の2時間を超えない範囲で、短めに区切る
- 光を通さない容器に入れる
山政小山園は、抹茶の緑色は光で退色し、抹茶を使って作った食品も同じだと説明しています。粉の抹茶の保存は、抹茶の賞味期限にまとめています。
開店前の仕込みと、注文ごとの手順
仕込みでは量を決めて準備しておき、抹茶は注文ごとに溶くのを基本にします。ここからは、上の公式レシピと食品衛生の目安をもとにした、編集部の手順の例です。
開店前
- 1杯分の抹茶(たとえば3g)を量る手順を決め、計りと茶こしを乾いた状態で置いておく(山政小山園は、ふるうのは使う直前としています)
- 抹茶を溶くお湯の温度を決め、温度を設定できるケトルやポットで用意する(一保堂茶舗は80℃)
- シロップを作る場合は作った時刻を書き、冷蔵する
- ミルクは冷蔵庫に入れたまま、使う分だけ出す
- 氷は、グラス1杯分の量(山盛りなど)を決め、写真で示しておく
注文ごと
- 抹茶を量ってふるい、決めた量のお湯で溶く
- グラスに氷を入れ、冷たいミルクを注ぐ(甘味がある場合はここで入れる)
- 溶いた抹茶を、氷の上から静かに注ぐ
- ストローかマドラーを添えて出す
抹茶を溶く工程を注文ごとにすると、作り置きの時間の管理がいらなくなります。混む時間帯に作り置きを使う店は、上の「作り置きはできるか」の目安で時間を区切ります。
1杯の原価
1杯の抹茶代は、1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 1杯に使うグラム数で計算します。ホットの抹茶ラテと同じ式です。
1杯3gなら、1kgの抹茶で約330杯分です。山政小山園の冷抹茶と同じ2gにすれば、500杯分になります。1kgあたりの仕入れ値がどう決まるかは抹茶の値段はどう決まるのかにまとめています。抹茶代に次の代金を足したものが、1杯の材料費です。
- ミルク(1杯に使うml × 1mlあたりの値段)
- シロップ(1杯に使うg × 1gあたりの値段)
- 氷、カップ、ふた、ストロー
アイスは氷の量でミルクの量が変わるため、グラスと氷の量を先に決めてから、ミルクの量を量って原価を出します。売価に合わせた等級の選び方と、決める順番は、カフェの抹茶ラテに使う抹茶の選び方にまとめています。抹茶の仕入れ値が上がっている理由は、抹茶は今も足りないのかで見ています。
参考にした情報
- 一保堂茶舗「Iced Matcha Latte」 https://ippodotea.com/blogs/recipes-to-brew-japanese-tea/iced-matcha-latte
- 一保堂茶舗「抹茶ラテ」 https://www.ippodo-tea.co.jp/blogs/tea-recipe/19%E6%8A%B9%E8%8C%B6%E3%83%A9%E3%83%86
- 一保堂茶舗「水点て抹茶」 https://www.ippodo-tea.co.jp/blogs/tea-recipe/7%E6%B0%B4%E7%82%B9%E3%81%A6%E6%8A%B9%E8%8C%B6
- 一保堂茶舗「シャカシャカ抹茶」 https://www.ippodo-tea.co.jp/blogs/tea-recipe/15%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%AB%E6%8A%B9%E8%8C%B6
- 伊藤園「茶リスタ 小山和裕氏監修!本格抹茶ラテ」 https://www.itoen.jp/recipe/45614/
- 山政小山園「抹茶ラテのレシピ」 https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/enjoy/2019/post-2/index.html
- 山政小山園「冷抹茶の点て方」 https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/enjoy/2019/post-8/index.html
- 山政小山園「抹茶の取扱い」 https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/matcha/basic/handling.html
- 丸久小山園「抹茶アラカルト」 https://www.marukyu-koyamaen.co.jp/about-tea/enjoy-recipe.html
- Singapore Food Agency「Guidelines for ordering catered meals for functions and events」 https://sfa.gov.sg/docs/default-source/food-retail/guidelines-for-ordering-catered-meals-for-functions-and-events.pdf
- 厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」(最終改正 平成29年6月16日) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000168026.pdf
- 日本茶業中央会「緑茶の表示基準」 https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
























































































