抹茶パン(matcha bread)や抹茶クロワッサンは、ラテを出しているカフェやベーカリーが朝の棚に足しやすいメニューです。ただ、パンは酵母(イースト)でふくらませるので、抹茶の量や発酵への影響が気になります。公式レシピの抹茶の量を比べ、発酵への影響、クロワッサンの折り込み、焼き色、日持ち、1個あたりの抹茶代を順に確かめます。
抹茶パンの種類と、抹茶を入れる場所
抹茶パンは、抹茶を入れる場所で作り方が変わります。生地全体に混ぜるもの、生地の一部だけに入れるもの、上にのせるクッキー生地に入れるものがあります。
パンの種類ごとの入れ方
| 種類 | 抹茶を入れる場所 | 公式レシピの例 |
|---|---|---|
| 食パン・ロールパン | 生地全体、または生地の半分(マーブル) | King Arthur Baking(米国の製粉会社)のマーブル食パンは、生地の半分にだけ抹茶を混ぜる |
| あんパン・ベーグル | 生地全体。あんに入れる例もある | 東芝・日立の家電のレシピは、強力粉に抹茶を混ぜる |
| メロンパン | パン生地と、上にのせるクッキー生地 | 神戸女子短期大学の資料は、両方に抹茶を入れている |
| クロワッサン | 折り込む前の生地(デトランプ:バターを包む生地) | Debic、Mizuba Teaは、バターには入れない |
焼いたクロワッサンに後から足す方法
英語のレシピサイトには、焼いたクロワッサンに抹茶入りのアーモンドクリームを詰めて焼き直すものや、抹茶入りのホワイトチョコを掛けるものもあります。この場合の抹茶の量は、クリームやチョコの配合としてお菓子に使う抹茶の選び方で比べています。
公式レシピの抹茶の量を比べる
抹茶をgで書いた公式レシピを比べると、粉に対する抹茶は約1〜3%でした。割合は、抹茶の重さを強力粉(または中力粉)の重さで割って編集部が計算したものです。
粉に対する抹茶の割合
| 出典 | パン | 抹茶 | 粉 | 粉に対する抹茶 | 焼き方 | 個数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東芝(石窯ドーム) | 抹茶あんパン | 2.5g | 強力粉250g | 1% | 210℃で予熱し200℃で7〜12分 | 12個 |
| 東芝(石窯ドーム) | 抹茶と栗あんベーグル | 5g | 強力粉250g | 2% | 蒸してから190℃で13〜20分 | 4個 |
| 日立(IHクッキングヒーター) | あんパン(抹茶入りの生地) | 5g | 強力粉230g | 約2.2% | グリルの自動メニュー | 8個 |
| Debic(業務用のバター・クリームのブランド) | 抹茶クロワッサン生地(パン・オ・マッチャ) | 20g | 強力粉850g | 約2.4% | 28℃で1時間30分発酵、170℃で17分 | 40個 |
| King Arthur Baking | マーブル食パン | 12g | 中力粉480g(湯種の60gを含む) | 2.5% | 350°F(約177℃)で40〜45分 | 1斤 |
| 神戸女子短期大学の資料 | 抹茶パン・抹茶メロンパン | 粉の3% | 小麦粉100に対して | 3% | 180℃で15分 | 記載なし |
| 東芝(石窯ドーム) | お手軽パン(抹茶) | 5g | 強力粉160g | 約3.1% | 電子レンジで発酵し、オーブンで焼く | 8個 |
| Mizuba Tea(抹茶の販売会社) | 抹茶クロワッサン | 大さじ3 | 中力粉3.5〜4カップ | 体積表記 | 350°F(約177℃)で12〜15分 | 32個 |
King Arthur Bakingの食パンは、抹茶を生地の半分にだけ入れるため、抹茶を入れた側の粉に対しては約5%になります(編集部の計算)。
出典: Debic「Pain au matcha」 https://www.debic.com/en/recipes/pain-au-matcha
ケーキより少なく、クッキーと重なる
同じように公式レシピで比べると、台湾カステラ・ロールケーキ・カップケーキは粉の約7〜17%(お菓子に使う抹茶の選び方)、クッキーは約2.7〜12.5%(抹茶クッキーをカフェで焼いて売るには)でした。パンの約1〜3%はケーキより低く、クッキーの低い側と重なります。店では表の範囲から2〜3つの量で焼き比べ、色と苦みで決めます。
抹茶は粉と合わせてから入れる
東芝の抹茶あんパンは、強力粉に抹茶を混ぜて一緒にふるっておきます。日立は、粉類を袋に入れてふり混ぜてから水分を加えます。どちらも、水分より先に抹茶を粉と混ぜています。
抹茶は発酵やふくらみに影響するか
抹茶を粉の3%まで入れた生地では、ふくらみに影響がなかったという資料があります。一方で、茶の成分が生地の中で酵母にどう働くかを直接測った研究は見つかりませんでした。
3%ではふくらみに影響しなかった
神戸女子短期大学の2012年の資料は、京都府和束町の抹茶とほうじ茶の粉を、小麦粉に対して0・1・3・5%加えてパンを焼きました。小麦粉の3%を加えた生地では、膨張量など製パン性(パンの焼きやすさとふくらみ)に影響がなく、焼いたあとのお茶の風味もよいと評価されています。パン・あん・クッキーとも3%が好まれ、粉末茶の量は3%が適量としています。
出典: 細見和子「京都府和束町における茶葉の生産とその利用について」神戸女子短期大学 論攷57巻(2012年) https://www.yg.kobe-wu.ac.jp/jc/research/ronkou/pdf/57/vol57_05.pdf
この資料は、学生8人と教員1人で味を比べた小さな試作の報告で、ふくらみの数値は載っていません。生地に1%や5%を入れたときのふくらみも書かれていません。
粒の細かい抹茶はふくらみがよかった
伊藤園の中央研究所の研究者らが2003年に日本食品科学工学会誌に出した論文は、加工食品用に粒を細かくした抹茶を作りました。抄録によると、粒の大きさは通常の抹茶の平均11.5µm(マイクロメートル:1,000分の1mm)に対し、細かくしたものは3.2µmです。細かくした抹茶は水の中で沈みにくく、通常の抹茶よりパンのふくらみがよく、そばの色もよかったと報告しています。比べているのは抹茶どうしの粒の大きさの違いで、抹茶を入れないパンとの比較ではありません。編集部が確かめたのは抄録だけで、本文の配合や数値は確認できていません。
確かめられなかったこと
緑茶のカテキン(渋みの成分)が製パン用の酵母の働きを弱めるかを、パン生地の中で直接測った研究は見つかりませんでした。抹茶の量を増やすときは、同じ発酵時間でのふくらみを、抹茶を入れない生地と並べて確かめます。
抹茶クロワッサンの折り込み
公式レシピでは、抹茶はバターではなく生地に入れ、生地とバターを冷やしながら折り込んでいました。抹茶の生地を外側に出すと、焼き上がりに緑の層が見えます。
Debicの手順(業務用)
- 抹茶の生地とプレーンの生地を、同じ配合で別々にこねる(抹茶の生地だけ抹茶20gを足す)
- 18〜20分こねて、生地を22〜24℃にする
- 30×40cmにのばして2℃まで冷凍し、3℃以下の冷蔵庫で翌日まで休ませる
- バターの上に抹茶の生地、下にプレーンの生地を置き、四つ折りと三つ折りを1回ずつ。抹茶側を外にする
- 冷凍庫で30分、冷蔵庫で30分休ませてから成形し、28℃で1時間30分発酵、170℃で17分焼く
Mizuba Teaの手順(家庭向け)
抹茶の販売会社Mizuba Teaは、抹茶をバターではなく生地(デトランプ)に入れます。バターは室温より少し冷たく、固いが硬すぎない状態で包み、折り(ターン)を4回、折るたびに30分冷やします。抹茶で生地は葉の緑になり、味は塩気のある方向に寄るとしています。どちらも抹茶をバターに混ぜず、生地とバターの固さをそろえるために冷やす時間を取っています。
焼き色と中の緑
公式レシピの焼成温度は170〜200℃(東芝のあんパンは210℃で予熱)で、外側は焼き色がつきます。緑を見せたいパンでは、抹茶の生地をどこに置くかと、どこまで焼くかを決めます。
レシピが書いている焼き上がりの目安
King Arthur Bakingの食パンは、皮がこんがりきつね色になり、中心の温度が190°F(約88℃)以上になるまで焼くとしています。Debicは170℃で17分、神戸女子短期大学の資料は180℃で15分です。熱で緑が落ちる仕組みはお菓子に使う抹茶の選び方で説明しています。
緑を見せる工夫
Debicのパン・オ・マッチャは、抹茶の生地を外側にして折り、断面と表面に緑の層を出しています。マーブル食パンや抹茶メロンパンのように、抹茶の生地とプレーンの生地を組み合わせると、緑の部分がはっきりします。King Arthur Bakingは、値段の高いセレモニアル(飲む用として売られる等級)の抹茶のほうが、緑が鮮やかになると書いています(この一文は「cookies」と書かれています)。等級の呼び名に公的な基準はないため、何を比べるかは抹茶のグレードの違いで確かめます。
日持ちと保存、アレルゲン
パンは常温で保存し、冷蔵庫に入れると硬くなるのが早まります。数日以上置くなら冷凍します。
業界団体とメーカーの目安
| 出典 | 保存のしかた |
|---|---|
| Federation of Bakers(英国の製パン業界団体) | 常温(理想は17℃)で保存。家庭の冷蔵庫の平均約5℃は、パンが最も早く硬くなる温度。包装したパンは冷凍で3か月まで。皮のかたいパンは買った日に食べるのがよい |
| King Arthur Baking(マーブル食パン) | よく包んで常温で5日まで。長く置くなら冷凍 |
Federation of Bakersは、とても暑い日はカビを遅らせるために冷蔵してもよいが、硬くなるのは早まるとしています。どちらも家庭向けなので、売るときの期限は、店の配合と包装で保存して、食感と色を確かめてから決めます。抹茶の粉そのものの保存は抹茶の賞味期限にまとめています。
袋に入れて売るとき
抹茶パンは、小麦、乳(バター・牛乳)、卵(生地や塗り卵)を含むものが多く、アーモンドクリームを詰めれば木の実も加わります。粉乳入りの抹茶ミックスを使うと乳が加わります。シンガポール・タイ・インドネシアのアレルゲンの品目と表示が要る場合は、抹茶クッキーをカフェで焼いて売るにはにまとめています。
1個あたりの抹茶代
1個の抹茶代は「1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 1個に入る抹茶のg数」で出します。1個に入る抹茶は、1回分の抹茶の量を焼ける個数で割ります。
1個に入る抹茶の量
公式レシピの量で計算すると、次のとおりです(編集部の計算)。1個の抹茶代は、ここに出した1個あたりのg数に「1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000」を掛けて出します。
| 出典 | 1回分の抹茶 | 個数 | 1個あたりの抹茶 |
|---|---|---|---|
| 東芝 抹茶あんパン | 2.5g | 12個 | 約0.21g |
| Debic 抹茶クロワッサン(生地の分) | 20g | 40個 | 0.5g |
| 日立 あんパン | 5g | 8個 | 約0.63g |
| 東芝 抹茶と栗あんベーグル | 5g | 4個 | 1.25g |
| King Arthur Baking マーブル食パン | 12g | 1斤 | 12g |
小さなパンなら、抹茶ラテ1杯(一保堂茶舗のレシピで3g)の抹茶で、あんパンを10個以上焼けます。Debicのパン・オ・マッチャは、詰める抹茶のガナッシュにも抹茶20gを使うので、その分を足して計算します。
原価に入れるもの
抹茶のほかに、粉・バター・卵・乳製品、袋とラベル、焼き損じや売れ残りの分も入れます。抹茶の値段の決まり方は抹茶の値段はどう決まるのかにまとめています。
パンに使う抹茶の選び方
パンの抹茶は、ラテ用と同じものを使うか分けるかを、店の配合で焼き比べて決めます。1個あたりの抹茶が少ないので、等級を変えても1個の原価の差は小さくなります。
確かめること
- 原材料が抹茶100%か。砂糖や粉乳を混ぜた抹茶ミックスでは、レシピの量で抹茶が足りない(見分け方はPure matcha(ピュア抹茶)とは)
- 粒の細かさ。細かい抹茶でパンのふくらみがよかったという報告がある
- 同じ仕様で続けて仕入れられるか。ロットが変わると焼き上がりの色が変わる
焼き比べの手順
- 候補の抹茶を、店の配合で抹茶の量だけそろえて焼き、抹茶を入れない生地と同じ発酵時間でふくらみを比べる
- 焼き上がりと翌日の、外側と断面の色を同じ光の下で写真に撮る
- 苦みと甘さのつり合いを食べて確かめ、1個あたりの抹茶代と売値を合わせて決める
Omakase Matchaは、宇治・八女・静岡・鹿児島・宮崎の抹茶を扱い、注文は1kgから、サンプルは3種類まで取り寄せられます。焼き比べ用の抹茶はサンプル請求から、産地の違いは抹茶の産地からご覧ください。
参考にした情報
- King Arthur Baking「Marbled Matcha Milk Bread」 https://www.kingarthurbaking.com/recipes/marbled-matcha-milk-bread-recipe
- Debic「Pain au matcha」 https://www.debic.com/en/recipes/pain-au-matcha
- Mizuba Tea「Mizuba Matcha Croissants」 https://mizubatea.com/blogs/recipes/mizuba-matcha-croissants
- 東芝ライフスタイル 石窯ドーム オリジナルレシピ「抹茶あんパン」 https://www.toshiba-lifestyle.com/jp/microwaves/recipes/detail/818
- 東芝ライフスタイル 石窯ドーム オリジナルレシピ「お手軽パン 抹茶」 https://www.toshiba-lifestyle.com/jp/microwaves/recipes/detail/1363
- 東芝ライフスタイル 石窯ドーム オリジナルレシピ「抹茶と栗あんベーグル」 https://www.toshiba-lifestyle.com/jp/microwaves/recipes/detail/607
- 日立 IHクッキングヒーター おすすめレシピ「あんパン」 https://kadenfan.hitachi.co.jp/ih/recipe/m/all/o141.html
- 細見和子「京都府和束町における茶葉の生産とその利用について」神戸女子短期大学 論攷57巻(2012年) https://www.yg.kobe-wu.ac.jp/jc/research/ronkou/pdf/57/vol57_05.pdf
- Haraguchi, Imada, Sawamura「Production and characterization of fine matcha for processed food」日本食品科学工学会誌 50(10) 468-473(2003年)、AGRISの抄録 https://agris.fao.org/search/en/records/647242e92c1d629bc9792fac
- Federation of Bakers「Consumer Factsheet No.18 Keeping Bread Fresh」 https://www.fob.uk.com/wp-content/uploads/2017/01/FS-18-Keeping-Bread-Fresh.pdf
- 一保堂茶舗「抹茶ラテ」 https://www.ippodo-tea.co.jp/blogs/tea-recipe/19%E6%8A%B9%E8%8C%B6%E3%83%A9%E3%83%86
























































































