抹茶の点て方は、お店や本によって分量や温度が少しずつ違います。カフェで毎日出すなら、まず基準の点て方を決め、誰が点てても同じ味になるようにそろえる必要があります。この記事では、京都府茶業研究所と京都の老舗が公開している点て方を比べ、カフェで毎日点てるときの手順と、暑い国での保存までを見ていきます。
抹茶とは、薄茶と濃茶の違い
抹茶は、碾茶(てんちゃ)を茶臼などで微粉末にしたお茶です。日本茶業中央会の「緑茶の表示基準」によると、碾茶は覆いをかけて育てた茶葉を、碾茶炉などで揉まずに乾かしたものです。
薄茶と濃茶は点て方の名前
抹茶の飲み方には、薄茶(うすちゃ)と濃茶(こいちゃ)があります。山政小山園は、薄茶と濃茶は点て方の名前で、品質を示すものではないと説明しています。
- 薄茶:1.5〜2gほどの抹茶を、60〜70mlほどのお湯で泡立てて点てる
- 濃茶:その倍以上の抹茶を、少ないお湯で練るようにして点てる
濃茶は苦みや渋みが出やすいため、老舗は濃茶には上の等級の抹茶を勧めています。
用意するもの
家庭でもカフェでも、そろえる道具は同じです。カフェでは、量と温度を毎回そろえるために、計りと温度計を加えます。
| 道具 | 使い方 |
|---|---|
| 茶筅(ちゃせん) | 竹で作った泡立て器。お湯で温めてから使う |
| 茶碗 | 茶筅を動かせる広さのあるもの。お湯で温めておく |
| 茶こし | 抹茶をふるってダマをなくす |
| 計り | 抹茶をgで量る(カフェでは0.1g単位で量れるもの) |
| 温度計 | お湯の温度をそろえる |
山政小山園は、茶碗と茶筅をお湯で温めておくと、茶筅がしなやかになって点てやすくなるとしています。
基本の点て方(薄茶)
京都府茶業研究所と京都の老舗が公開している薄茶の点て方は、量と湯温がほぼ同じです。
公的機関と老舗の比較
| 出典 | 抹茶 | お湯の量 | 湯温 | 点てる時間 |
|---|---|---|---|---|
| 京都府茶業研究所 | 約2g | 70ml | 70〜80℃ | 記載なし |
| 一保堂茶舗 | 2g | 60ml | 80℃ | 15秒 |
| 山政小山園 | 1.5〜2g | 約70ml | 80℃ | 15秒ほど |
| 丸久小山園 | 約1.5g | 約70ml | 冬75〜85℃、夏70〜80℃ | 記載なし |
多くの出典に共通するのは、約2g・80℃前後・60〜70mlです。点てる時間を書いているのは一保堂茶舗と山政小山園で、一保堂茶舗は15秒、山政小山園は15秒ほどとしています。お店の基準は、この範囲から決めると始めやすくなります。
点て方の手順
- 抹茶を茶こしでふるい、温めた茶碗に入れる
- 80℃前後のお湯を少しだけ注ぎ、茶筅で練って粉を溶かす
- 残りのお湯を注ぐ
- 茶筅を茶碗の底から少し浮かせ、手首を前後に動かして15秒ほど点てる(一保堂茶舗と山政小山園は「M字」「m字」に動かすとしています)
- 表面の大きな泡を茶筅の先でつぶし、中央が少し盛り上がるように静かに茶筅を上げる
京都府茶業研究所は、最初は小刻みに動かし、最後に表面を整えるとしています。丸久小山園は、底の抹茶をゆっくり散らしてから手首を前後にしっかり振り、最後は茶筅の先を泡の表面まで上げ、ゆっくり動かして泡を細かくするとしています。
うまくいかないときの見直し方
| 症状 | 見直すところ | 出典 |
|---|---|---|
| 粉のかたまりが残る | 使う直前にふるう。少量のお湯で先に練る | 京都府茶業研究所、山政小山園 |
| ふるっても崩れない硬い塊がある | 濡れた手やスプーンの水滴が入っていないか | 山政小山園 |
| 大きな泡が残る | 最後に茶筅の先で大きな泡をつぶし、表面を整える | 京都府茶業研究所 |
| 泡が細かくならない | 茶筅を底から少し浮かせる。最後は茶筅の先を泡の表面まで上げ、ゆっくり動かして泡を細かくする | 丸久小山園 |
| 色が赤みを帯びている | 高温や高湿度で抹茶が劣化している。保管の温度と湿気を見直す | 山政小山園 |
| 緑色があせている | 光で色が抜けている。光を通さない容器に入れ、暗いところに置く | 山政小山園 |
店で味がぶれるときは、まず量・湯温・時間の3つが基準どおりかを確かめます。
ダマを防ぐ方法
ダマを防ぐには、使う直前にふるうことと、少量のお湯で先に練ることの2つが大事です。
ダマができる理由
山政小山園によると、抹茶は約10ミクロンの細かい粉で、静電気や保存中の自重で固まってダマになります。丸久小山園は輸送中の振動も原因に挙げ、ダマができても品質には問題ないとしています。
一方で、濡れた手やスプーンの水滴が入ると、ふるっても崩れない硬い塊になります。抹茶を扱う道具は乾いた状態で使います。
ふるう、先に練る
京都府茶業研究所は、抹茶を茶こしでふるってダマをなくし、少量のお湯で先に溶いてから残りのお湯を注ぐとしています。抹茶の品質を調べる審査でも、最初は抹茶がひたる程度のお湯を注いでなじませてから点てます。
季節と水で変えるところ
同じ量と時間で点てても、季節と水によって仕上がりが変わります。
季節で湯温を変える
京都府茶業研究所は、湯温を夏はやや低め、冬はやや高めにするとしています。丸久小山園は、冬は75〜85℃、夏は70〜80℃を目安にしています。暑い国のカフェで1年中同じ温度で点てる場合は、店の室温に合わせて基準の湯温を決めます。
硬度の低い水を使う
丸久小山園は、抹茶には硬度の低い軟水を使い、水道水やミネラルウォーターは5分間沸騰させるとしています。海外のミネラルウォーターは硬度がさまざまなため、注意が要るとも書いています。
カフェで毎日点てる手順
カフェでは、点てる人や時間帯が変わっても味をそろえることが大事です。ここからは、上の公的機関と老舗の点て方をもとにした、編集部の手順の例です。
開店前に準備しておくこと
- 茶こしと計りを乾いた状態で用意し、1杯分ずつ量ってすぐふるえるようにしておく(山政小山園は、ふるうのは使う直前としています)
- 1杯分の量(たとえば2g)を決め、計りで量る手順にする
- 温度を設定できる電気ケトルやポットで、基準の湯温のお湯を用意する
- 茶筅を使う場合は、使う前にお湯で温める
注文ごとに点てる
点てた抹茶やペーストをどれくらいの時間置いておけるかを示した公的な資料は見つかりませんでした。味と色をそろえるには、注文ごとに点てるのが基本です。作り置きをする場合は、店で時間を変えて味と色を比べてから、置ける時間を決めます。
道具の使い分け
茶筅のほかに、電動のミルクフォーマーを使う店もあります。抹茶の審査を説明した茶業研究報告では、審査の道具に茶筅を挙げ、電動茶筅を使うこともあるとしています。ミルクフォーマーには触れておらず、茶筅と同じように点てられるかを示した資料は、編集部では確認できていません。ミルクフォーマーを使う場合は、茶筅で点てたものと味と泡を比べてから、基準にします。
濃茶と冷たい抹茶の点て方
濃茶は抹茶を多く、お湯を少なくして練るように点てます。冷たい抹茶は、少量のお湯で練ってから冷水を加えます。
濃茶
一保堂茶舗の濃茶は、抹茶4g、80℃のお湯30mlで、ゆっくり15秒ほど練ります。薄茶の倍の抹茶と、半分のお湯です。
冷たい抹茶
山政小山園の冷たい抹茶は、ふるった抹茶2gを少量のぬるま湯で練り、冷水30〜40mlを注いでm字に15秒ほど点て、氷を浮かべます。丸久小山園は、お湯で少し濃いめに点てて氷を浮かべるとしています。抹茶ラテの配合は、カフェの抹茶ラテに使う抹茶の選び方にまとめています。
保存と、仕入れたロットの確かめ方
抹茶は温度、湿度、光、においに弱く、劣化すると色が赤みを帯びます。暑い国のカフェでは、店に届いてからの保管も味を左右します。
暑い国での保管
茶業研究報告に載った保存試験では、封を切る前の原料抹茶を温度を変えて保管しました。37℃では3〜4週で品質が大きく落ち、25℃以下なら24週、商品の特徴を保てました。
出典: 茶業研究報告 93号(2002)「原料抹茶の保存条件が品質に与える影響」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/2002/93/2002_93_1/_pdf
開封後の保存の仕方は、老舗によって書いていることが違います。
- 一保堂茶舗:光を通さない容器に密閉し、香辛料やコーヒーなどにおいの強いものから離して戸棚に置く。開封後1か月以内に使い切るのが目安
- 山政小山園:光を通さない容器に密閉し、開封後は湿気のない冷暗所に置いて短い期間で使い切る。冷やしていたものは常温に戻してから開ける(結露を防ぐ)。使う量に合った小さめの袋で、こまめに買う
- 丸久小山園:しっかりフタをして冷蔵庫に入れ、においが移らないようにする。冷蔵庫から出したものは常温に戻してから開ける
3社がそろって書いているのは、密閉することと、においの強いものから離すことです。
仕入れたロットの確かめ方
茶業研究報告の「抹茶の審査について」では、抹茶2gに熱湯100mlを注いで20秒ほど点て、色沢(色とつや)、粒度、泡立ち、泡の色、味の5つを見ています。新しいロットが届いたら、前のロットと同じ条件で点てて並べると、違いが分かりやすくなります。
出典: 茶業研究報告 134号(2022)「抹茶の審査について」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha/2022/134/2022_31/_pdf
参考にした情報
- 京都府茶業研究所 お茶のおいしい入れ方(抹茶) https://www.pref.kyoto.jp/chaken/irekata_maccha.html
- 一保堂茶舗「Basic Usucha (Matcha)」 https://global.ippodo-tea.co.jp/blogs/tea-recipe/basic-usucha-matcha
- 一保堂茶舗「Usucha (Classic Matcha)」 https://ippodotea.com/blogs/recipes-to-brew-japanese-tea/usucha-thin-matcha
- 一保堂茶舗「Basic Koicha (Matcha)」 https://global.ippodo-tea.co.jp/blogs/tea-recipe/basic-koicha-matcha
- 一保堂茶舗「How to keep your matcha fresh」 https://ippodotea.com/blogs/ippodo-tea-blog/how-to-keep-your-matcha-fresh
- 丸久小山園 公式サイト(抹茶の点て方) https://www.marukyu-koyamaen.co.jp/about-tea/enjoy-matcha.html
- 丸久小山園 公式サイト(抹茶の知識・保存) https://www.marukyu-koyamaen.co.jp/about-tea/know-matcha.html
- 山政小山園 公式サイト(抹茶の点て方) https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/enjoy/2019/post/
- 山政小山園 公式サイト(冷たい抹茶) https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/enjoy/2019/post-8/index.html
- 山政小山園 公式サイト(抹茶の取扱い) https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/matcha/basic/handling.html
- 山政小山園 公式サイト(抹茶の名称) https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/matcha/point/name.html
- 日本茶業中央会「緑茶の表示基準」 https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
- 茶業研究報告 93号(2002)「原料抹茶の保存条件が品質に与える影響」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/2002/93/2002_93_1/_pdf
- 茶業研究報告 134号(2022)「抹茶の審査について」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha/2022/134/2022_31/_pdf
























































































