抹茶ラテは、シンガポールやタイのカフェで定番のメニューになっています。2026年10月に確かめたところ、スターバックスのシンガポールの公式メニューにはMatcha Latte、Iced Matcha Latte、甘さを控えたIced Low-fat Matcha Latte (Less Sweet)が並び、タイのCafé Amazonのデリバリーのメニューにはフレッシュ抹茶ラテ(เฟรชมัทฉะลาเต้)が60バーツで載っていました。材料が抹茶・湯・ミルクと少ないため、苦い、ダマが残る、底に沈む、色がくすむといったぶれが、そのまま客の目と舌に届きます。この記事では、症状ごとに原因を公的な資料と研究で確かめ、店でできる直し方をまとめます。作り方そのものはホット抹茶ラテの作り方とアイス抹茶ラテの作り方にあります。
症状から原因を探す早見表
抹茶ラテの失敗の多くは、湯の温度、抹茶の量、溶き方、抹茶の状態、ミルクの温度のどれかで起きます。まず下の表で症状を探し、「最初に試すこと」から1つずつ変えます。
6つの症状の早見表
| 症状 | 主な原因 | 最初に試すこと | 詳しい節 |
|---|---|---|---|
| 苦い・渋い | 湯が熱い、抹茶が多い、二番茶以降の抹茶 | 湯を70〜80℃にする | 苦い |
| 薄い・水っぽい | 抹茶の割合が低い、氷が溶ける | 抹茶のgと液体のmlを量り直す | 薄い |
| ダマが残る | ふるっていない、粉に液体を一度に入れる | ふるって、少量の湯で練る | ダマ |
| 底に沈む・分離する | 抹茶は溶けずに浮いている、粒が大きい | 出す直前に混ぜる | 沈む |
| 色が黄色・茶色・くすむ | 熱・酸・光、古い抹茶 | 抹茶の保管場所と開封日を見る | 色 |
| 泡がすぐ消える | ミルクの温めすぎ、乳脂肪、粒の粗い抹茶 | ミルクを60℃までにする | 泡 |
表の使い方
ここからは編集部の考え方です。症状が2つ重なっているときは、表の上にあるものから直します。たとえば「苦くて色もくすむ」なら、湯温を下げても苦みが残るかを先に確かめ、それでも変わらなければ抹茶そのものを疑います。一度に2つ以上を変えると、どれが効いたのか分からなくなります。
抹茶ラテが苦いとき
苦み・渋みのもとはカテキンとカフェインで、茶葉でいれる緑茶では湯の温度が高いほど多く出ます。湯温、抹茶の量、抹茶の茶期の順に見直します。
湯の温度で、出てくる成分が変わる
農林水産省の広報誌の緑茶の特集では、日本茶インストラクター協会の支部長が、うま味の成分であるテアニン(茶に多いアミノ酸)は50度以上の低い温度でも出てくるが、渋み・苦みの成分であるカテキンやカフェインは80度以上の高い温度で出てくる、と説明しています。
農林水産省がまとめた研究成果「水出し緑茶」では、冷蔵庫ほどの10℃前後の冷水で緑茶を淹れると、テアニンと、渋みの少ないカテキンのEGC(エピガロカテキン)は湯で淹れたときと出る量が大きく変わらず、苦みのカフェインは約半分、渋みのEGCG(エピガロカテキンガレート)は1/5程度に減りました。
出典: 農林水産省「緑茶の美味しさと機能性を両立する『水出し緑茶』」 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo03/gityo/new_tech_cultivar/2021/2021seika-19.html
どちらも茶葉からお茶をいれる緑茶の話で、粉ごと飲む抹茶を測ったものではありません。それでも、京都府茶業研究所は抹茶を70〜80℃に冷ました湯で溶くよう案内しており、沸騰したての湯を使わないという点は、抹茶でも同じです。
抹茶の量を量り直す
一保堂茶舗の抹茶ラテのレシピは、抹茶3gを80℃の湯100mLで溶き、ミルク100mLを合わせます。ほかの公式レシピも含めた配合の比較はホット抹茶ラテの作り方にあります。スプーンの山盛りで量っていると、1杯ごとの抹茶の量がぶれて、苦い日とそうでない日が出ます。抹茶は0.1g単位のはかりで量り、レシピカードにgで書きます。
二番茶以降の抹茶は苦み・渋みが出やすい
鹿児島県南九州市は、二番茶は一番茶より日照時間が長い時期に育つため、苦み・渋みの成分のカテキンやカフェインを多く含み、旨味や甘みは減ると説明しています。湯温と量を直しても苦い場合は、茶期の違う抹茶を同じ配合で並べて比べます。茶期と等級の違いは抹茶のグレードの違いに、苦みの少ない冷水で点てる方法は水と氷だけで作るアイス抹茶にまとめています。
抹茶ラテが薄い・水っぽいとき
薄く感じるときは、液体の合計に対する抹茶の割合が下がっているか、氷が溶けて水が増えています。ミルクを増やしたのに抹茶の量はそのまま、というずれがないかを先に見ます。
抹茶の割合で見る
公式レシピの抹茶ラテを比べると、液体の合計に対する抹茶の割合は約1.3〜1.8%でした(ホット抹茶ラテの作り方で編集部が計算)。一保堂茶舗の配合は、抹茶3gに湯とミルクの合計200mLで1.5%です。カップを大きくしたときやミルクを足したときは、抹茶も同じ割合で増やします。
アイスは氷の分を見込む
アイスでは、湯で溶いた抹茶の熱で氷が溶け、そのぶん薄まります。溶かす湯を少なめにする、冷水で溶く、グラスに入れる氷の量を毎回そろえる、のどれかで味が安定します(編集部の考え方)。2層に見せるときの注ぎ方はアイス抹茶ラテの作り方に、オーツミルクで味がぼやけるときはオーツミルクの抹茶ラテにまとめています。
抹茶がダマになるとき
ダマは、使う直前にふるうことと、少量の湯で先に練ることで防げます。ダマがあっても品質の問題ではありませんが、口当たりと見た目が悪くなります。
ダマができる理由
丸久小山園は、静電気と輸送中の振動などで抹茶にダマができることがあり、品質には問題はないとしています。そのうえで、見た目が悪く点てにくいので、ふるいにかけるよう勧めています。ここからは編集部の考え方ですが、粉に水滴が入らないよう、スプーン、茶こし、ボウルは乾いた状態で使います。
ふるって、少量で練る
京都府茶業研究所は、抹茶を茶こしで一度ふるってダマをなくし、湯を少量注いで、ダマができないように茶筅で溶いてから残りを注ぐ手順を案内しています。ミルクや湯は一度に全部注がず、少量で練ってから足します。
忙しい時間の段取り(編集部の考え方)
ここからは編集部の考え方です。注文が重なる時間は、開店前に1日分を茶こしでふるって乾いた密閉容器に入れておくと、1杯ごとにふるう手間が減ります。容器は光を通さないものにします。ダマの防ぎ方の細かい手順は抹茶の点て方の「ダマを防ぐ方法」に、泡立て器やフローサーで粉を入れる場合の違いは抹茶コールドフォームの作り方にまとめています。
抹茶が沈む・分離するとき
抹茶は水に溶けるのではなく、細かい粒が液体の中に浮いている状態です。時間がたてば必ず底にたまるので、出す直前に混ぜることと、粒の細かい抹茶を選ぶことで遅らせます。
粒が大きいほど速く沈む
抹茶を加工食品に使う2003年の研究は、抹茶の課題として、水の中での浮き方の悪さ(懸濁性)、色の劣化、値段の高さを挙げています。この研究では、普通の抹茶の粒の平均は11.5µm(マイクロメートル:1mmの1,000分の1)、細かくした抹茶は3.2µmで、細かい抹茶のほうが水の中で沈む速さが小さかったと報告しています。普通の抹茶の粒は1〜100µmと幅があるとも書いています。
茶業研究報告に載った抹茶の審査の解説でも、点てた抹茶は懸濁液(粒が液体に浮いている状態の液体)で、時間がたつと粒が沈むため、味を見るときはスプーンでかき混ぜながらすくうとしています。
出す前に混ぜる
ここからは編集部の考え方です。作り置きした抹茶のベースは、ピッチャーの底に粒がたまっているので、注ぐ前に毎回混ぜます。テイクアウトでは、ストローかマドラーを添え、メニューかカウンターで「混ぜてお飲みください」と伝えます。仕入れる抹茶を変えたら、グラスの底のたまり方も作りたてと5分後で見比べます。層の見せ方は抹茶レモネード・トニック・ソーダの作り方の「分離・沈殿と、層の見せ方」にあります。
抹茶の色が黄色・茶色っぽいとき
抹茶の緑はクロロフィル(葉緑素)の色で、熱、酸、光、時間で変わり、赤みや褐色を帯びていきます。粉の段階で色が落ちているのか、作ってから落ちているのかを分けて見ます。
酸でクロロフィルが変わる
緑茶のクロロフィルを調べた2022年の研究は、フェオフィチン(クロロフィルからマグネシウムが抜けた物質)は酸性の条件でクロロフィルから容易にでき、褐色を帯びていて、緑の質を下げるとしています。同じ研究では、調べた緑茶のうち抹茶だけが、緑のクロロフィルa・bそのものの割合が高かったと報告しています。
レモネードやオレンジなど酸のある液体と合わせると、緑が落ちやすくなります。酸の強さの目安と、色を残す出し方は抹茶レモネード・トニック・ソーダの作り方にまとめています。焼き菓子のように加熱が強い場合は、お菓子に使う抹茶の選び方にあります。
光と温度で、粉の段階から落ちる
三重県工業研究所の2013年の報告は、抹茶製品を加工食品の中で最も光に弱いものの一つとしています。約5,000ルクスの光を3〜8時間当てた試験で、蛍光灯とLEDのどちらでも劣化の度合いに差はなく、70℃の保管庫に置いた抹茶も、光を当てたものと同じくらい色が劣化しました。
出典: 三重県工業研究所「LED技術を利用した抹茶の光劣化軽減に関する調査」研究報告No.37(2013年) https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000172115.pdf
原料の抹茶を温度を変えて保存した2002年の研究では、25℃以下なら24週間、商品としての特徴を保てましたが、37℃では3〜4週間で使える限界になりました。緑の減り方は、クロロフィルaの減り方とほぼ一致していました。丸久小山園も、抹茶は古くなったり劣化したりすると色が赤っぽく変わるとしています。
店で見るところ(編集部の考え方)
ここからは編集部の考え方です。
- 開封した日を袋に書き、色が落ちてきたら、同じロットの未開封の袋と並べて比べる
- カウンターの透明な瓶や、エスプレッソマシンの横に抹茶を置かない
- 作り置きしたベースは光を通さない容器に入れ、作った時刻を書く
- オーツミルクは色がベージュがかっているため、牛乳と同じ量の抹茶でも色の出方が変わることがある(オーツミルクの抹茶ラテ)
暑い国での保管と、開封後に使い切る日数の決め方は抹茶の賞味期限と保存にまとめています。
泡がすぐ消えるとき
抹茶ラテの泡は、ミルクの泡と抹茶の泡の2つがあり、どちらが消えているかで直すところが変わります。ミルクの泡は温度と脂肪で、抹茶の泡は粒の細かさで変わります。
ミルクは60℃までにする
エスプレッソマシンのメーカーのLa Marzoccoは、ミルクは熱くするほど甘さが減って泡の形が崩れやすく、65℃(150°F)を超えると泡が早く消えるとしています。しっかりした泡を目指すなら60℃(140°F)までにし、ピッチャーを手で持って熱く感じるころがその目安だと書いています。温度計をピッチャーに付け、作る人が変わっても同じ温度で止めます。
泡を支えるたんぱく質と、邪魔をする脂肪
乳たんぱく質は、空気と水の境目に集まって泡を安定させる性質を持っています(Sarkar・Singh、2015年)。牛乳の泡を5〜85℃で調べた研究(Kamathら、2008年)では、脱脂乳の泡は45℃前後で最も安定し、全乳では乳脂肪が15〜45℃で泡のでき方と安定を妨げました。均質化(脂肪の粒を細かくする処理)やUHT(超高温殺菌)をした牛乳では、その影響が小さくなりました。牛乳の泡についての総説(Huppertz、2010年)も、脂質が泡を損ないうるとしています。
これらは牛乳を泡立てる条件を調べた研究で、カフェの抹茶ラテを比べたものではありません。店では、使っているミルクの銘柄で泡立て、泡が残る時間を比べて決めます。植物性ミルクは商品ごとに泡立ちが違い、La Marzoccoはスチームを前提に作られたバリスタ用なら良い結果が出るとしています。
抹茶の泡は粒の細かさで変わる
茶業研究報告の抹茶の審査の解説は、粒が小さく品質の良い抹茶は、きめ細かい泡が時間がたっても減りにくく、粒の大きな抹茶は泡立ちが悪く、不ぞろいで粗い泡はすぐに減るとしています。茶筅で点てた抹茶の泡が残らないときは、点て方とあわせて抹茶の粒も疑います。冷たいフォームを上にのせるメニューの泡の作り方は抹茶コールドフォームの作り方にまとめています。
店で直すときの順番と、仕入れで確かめること
直すときは、量・温度・時間を量ってから、1つずつ変えて作りたてと比べます。点て方と温度を直しても苦み・色・泡が戻らないときは、抹茶そのものを替えて比べます。
直す順番(編集部の考え方)
ここからは編集部の考え方です。
- 今のレシピを、抹茶のg、湯のmlと温度、ミルクのmlと温度、甘味のgで書き出す
- 書き出したとおりに作れているかを、はかりと温度計で確かめる
- 早見表の「最初に試すこと」を1つだけ変え、変える前と並べて飲む
- 変えた内容と日付をレシピカードに書き、作る人全員で同じカードを使う
作り置きしたベースや溶いた抹茶を何時間置けるかは、食品衛生の目安とあわせてアイス抹茶ラテの作り方の「作り置きはできるか」にまとめています。
仕入れで確かめること
抹茶を替えるときは、仕様書で茶期、産地、粒の大きさ(分かれば)、製造日と賞味期限を確かめ、届いたら色と香りを見て、店のミルクで同じ配合のラテにして比べます。サンプルの比べ方と、劣化した抹茶のサインは抹茶の品質の見分け方に、ラテに向く等級の選び方はカフェの抹茶ラテに使う抹茶の選び方にあります。Omakase Matchaは、宇治・八女・静岡・鹿児島・宮崎の産地から仕入れた抹茶を扱っていて、サンプルは3種類までサンプル請求から頼めます。
直したあとの1杯の原価
1杯の抹茶代は「1kgあたりの仕入れ値 ÷ 1,000 × 1杯に使うグラム数」で計算します。薄さを直すために抹茶を2.5gから3gに増やすと、抹茶代は1.2倍になります。ミルク、甘味、カップの代金を足したものが1杯の材料費です。1kgあたりの仕入れ値がどう決まるかは抹茶の値段はどう決まるのかに、ほかの抹茶ドリンクの作り方は抹茶ドリンクの一覧にまとめています。
参考にした情報
- Starbucks Singapore「Beverages」 https://www.starbucks.com.sg/menu/beverages
- LINE MAN Wongnai「Café Amazon」 https://www.wongnai.com/delivery/businesses/577439iz/order
- 一保堂茶舗「Matcha Latte」 https://ippodotea.com/blogs/recipes-to-brew-japanese-tea/matcha-latte-recipe
- 京都府茶業研究所「お茶のおいしい入れ方 抹茶」 https://www.pref.kyoto.jp/chaken/irekata_maccha.html
- 丸久小山園「抹茶について・お茶の保存方法」 https://www.marukyu-koyamaen.co.jp/about-tea/know-matcha.html
- 農林水産省 aff 2017年4月号「特集1 緑茶(4)」 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1704/spe1_04.html
- 農林水産省「緑茶の美味しさと機能性を両立する『水出し緑茶』」 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo03/gityo/new_tech_cultivar/2021/2021seika-19.html
- 南九州市「二番茶・三番茶・四番茶・秋冬番茶」 https://www.city.minamikyushu.lg.jp/chirancha/ajiwau/chirancha_shurui/8903.html
- Haraguchi, Imada, Sawamura「Production and characterization of fine matcha for processed food」日本食品科学工学会誌 50(10)(2003年) https://agris.fao.org/search/en/records/647242e92c1d629bc9792fac
- 村上宏亮「抹茶の審査について」茶業研究報告 134号(2022年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha/2022/134/2022_31/_pdf
- Herrera, Viera, Roca「HPLC–MS2 Analysis of Chlorophylls in Green Teas Establishes Differences among Varieties」Molecules 27(19)(2022年) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9572584/
- 佐合徹・井上幸司「LED技術を利用した抹茶の光劣化軽減に関する調査」三重県工業研究所 研究報告 37号(2013年) https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000172115.pdf
- 原口康弘ほか「原料抹茶の保存条件が品質に与える影響」茶業研究報告 93号(2002年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/2002/93/2002_93_1/_pdf
- La Marzocco Home「steaming milk on the linea mini」 https://home.lamarzoccousa.com/steaming-milk-on-the-linea-mini/
- Sarkar A, Singh H「Emulsions and Foams Stabilised by Milk Proteins」Advanced Dairy Chemistry 1B(2015年) https://eprints.whiterose.ac.uk/id/eprint/92291/
- Kamath S, Huppertz T, Houlihan AV, Deeth HC「The influence of temperature on the foaming of milk」International Dairy Journal 18(2008年) https://research.ucc.ie/en/publications/the-influence-of-temperature-on-the-foaming-of-milk/
- Huppertz T「Foaming properties of milk: A review of the influence of composition and processing」International Journal of Dairy Technology 63(4)(2010年) https://research.ucc.ie/en/publications/foaming-properties-of-milk-a-review-of-the-influence-of-compositi/
























































































