タイで日本の抹茶を仕入れて売るには、輸入する会社の許可と、抹茶ごとの登録番号が必要です。関税は、割当の枠に入るかどうかで0%から90%まで変わります。タイ保健省の告示、タイ食品医薬品局(タイFDA)の規則、タイ歳入局の発表、ジェトロ(日本貿易振興機構)の調査で確かめました。ジェトロの調査は2024年10月時点なので、その数字には時点を添えています。
タイで抹茶は「茶」の規格がある食品として扱われる
タイで抹茶の輸入を管轄するのはタイFDAで、抹茶は保健省の告示第196号「茶」で規格が決まった食品に入ります。告示は茶を「品質または規格を定めた食品」と定め、満たすべき数値を並べています。
出典: タイ保健省告示第196号(B.E.2543)「茶」(タイ食品医薬品局掲載の改正込み版) https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=510362387866591232&name=Compi_196.pdf
告示が定める3つの種類
| 種類 | 告示の定義 |
|---|---|
| 茶 | チャノキ(Camellia)の若い葉・芽・茎を乾燥させたもの |
| 即席茶(instant tea) | 茶から抽出した液を、すぐ溶ける粉にしたもの |
| 調味した茶 | 茶か即席茶に味をつけ、密閉した容器に入れたもの |
抹茶は茶葉を挽いた粉で、抽出した液を粉にした即席茶とは作り方が違います。砂糖やミルクを混ぜた商品は別の扱いになるため、どの種類で申請するかを輸入業者と決めておきます。
茶の規格の数値
「茶」の規格は、水分8%以下、灰分(燃やして残る無機物)4%以上8%以下、熱水で抽出できる成分32%以上、カフェイン1.5%以上などです。「着色しないこと」という規格は、2020年の食品添加物の告示第417号で削られました。抹茶は湿気を吸いやすいため、水分8%以下は、タイに着いてからの保管でも気にかける数字です。
輸入する会社が取る食品輸入許可(อ.7)
販売のために食品を輸入するには、輸入する会社がタイFDAの食品輸入許可を取ります。タイ語の様式名から「อ.7(Orr.7)」と呼ばれます。食品法の省令第2号は、申請書(Orr.6)に、輸入施設と保管施設の所在を示す図や、品質を保つための設備の一覧を付けるよう定めています。
申請の流れと費用
ジェトロの調査(2024年10月時点)では、申請はタイFDAの電子申請システム(e-Submission)で行います。
| 順番 | 内容 | 期間・費用(ジェトロ、2024年10月時点) |
|---|---|---|
| 1 | 電子申請システムの使用許可を申請し、事業者の情報を登録する | 3営業日以内 |
| 2 | 申請書(Orr.6)と施設の書類を出し、申請手数料を払う | 5,000バーツ |
| 3 | タイFDAが審査し、許可されたら許可証手数料を払う | 1万5,000バーツ |
| 4 | システム上で許可証(Orr.7)と許可番号を受け取る | 申請から5営業日 |
同じ調査では、許可は発行した年を1年目として3年目の12月31日まで有効です。施設の書類は、輸入施設と保管施設の住居登録証の写し、所在図、カラー写真などです。タイにある施設の書類を出すため、申請するのはタイに施設を持つ会社です。
抹茶ごとに取る食品登録番号
輸入許可を取ったあと、抹茶の商品ごとに食品登録番号(通称オーヨーマーク)を取ります。タイFDAの規則(2024年)では、茶のような品質規格の食品は、成分の配合を届けない形の「登録・詳細の通知」で番号を受け取ります。
出典: タイ食品医薬品局規則「食品登録番号の手続き」(B.E.2567)付表2 https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=654871674310762496&name=fda-regulation-67.pdf
茶は配合を届けない手続きで番号を受け取る
この規則の付表2は、番号の取り方を食品の群ごとに分けています。品質規格の食品のうち、乳製品、アイスクリーム、密閉容器入りの飲料、コーヒーの調製品、サプリメントなどは第2項の「登録」で、成分の配合や規格の資料を出します。茶はこの一覧に入っておらず、画像の第4項の手続きになります。2026年3月の改正で、初回の輸入時に分析結果の原本を出す食品の一覧が改められましたが、ここにも茶は入っていません。
ジェトロの調査(2024年10月時点)では、申請様式はSor.Bor.7で、手数料は200バーツ、番号は即日に出ます。申請の際に、製造した工場のGMP証明書(次の章)をシステムに登録します。
番号は輸入施設ごとに振られる
食品登録番号は13桁(XX-X-XXXXX-Y-YYYY)で、3桁目が施設の種類(3はタイFDAが許可した輸入施設)、続く5桁が施設の番号です。番号に輸入施設の番号が入るため、輸入する会社が変われば、その会社の許可で番号を取り直します。自社ブランドで売る場合の注意は抹茶のプライベートブランド・OEMにあります。
日本側で用意する書類:GMP証明と植物検疫
タイでの手続きには、日本の工場と産地側で用意する書類が2つ要ります。製造施設の衛生基準を示すGMP証明書と、植物検疫証明書です。
GMP証明書
タイFDAは、輸入する食品が、タイの製造基準(保健省告示第420号)と同じかそれ以上の施設で作られたことの証明を求めています。ジェトロの調査(2024年10月時点)では、ISO 22000やFSSC 22000の認証書のほか、日本の食品衛生法第55条にもとづく営業許可証も使えます。日本語の証明書はタイ語か英語に訳して翻訳の証明を付け、発行機関や業種の名前は在タイ日本大使館がタイFDAに通知した英訳と合わせます。期限の書いていない証明書は、発行日から1年以内なら使えます。
植物検疫証明書
ジェトロの調査では、茶は植物検疫法の「輸入制限植物」で、日本の植物検疫証明書が要ります。一定以上加工されたものは不要とされていますが、抹茶がこれに当たるかは公的な資料で確認できませんでした。輸入する会社はタイ農業局のシステムで植物の輸入申告をし、受理番号(P.Q.5)を通関で使います。日本側の輸出検査の流れは抹茶の輸出方法にあります。
関税割当とJTEPA、VAT 7%
タイの茶の関税は、割当の枠内か枠外かで大きく変わります。茶はタイ商務省外国貿易局が管理する関税割当の品目で、枠内でも枠外でも、輸入の前に関税の権利を示す証明書の申請が要ります。
関税の率
ジェトロの調査(2024年10月時点)では、茶(HSコード0902.10・0902.20)の関税は次のとおりです。
| 区分 | 関税 |
|---|---|
| 割当の枠内(WTO税率) | 30% |
| 割当の枠外 | 90% |
| 割当の枠内で日タイ経済連携協定(JTEPA)を使う | 免除 |
日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)と地域的な包括的経済連携協定(RCEP)では、茶は対象外で使えません。関税をゼロにできるのは、割当の枠を取り、JTEPAを使う場合だけです。
割当の取り方
同じジェトロの調査では、2024年から2026年の枠内の量は年625トンです。割当は外国貿易局のシステム(SMART-I)から、年3回の期間に申請します。
- 割当の年の前年12月1日から10営業日
- 割当の年の6月10日から10営業日
- 割当の年の10月10日から10営業日
申請できるのは法人だけです。JTEPAを使うときは、日本商工会議所が出す特定原産地証明書と、外国貿易局が出す証明書(様式Tor.2)を輸入時に出します。Tor.2は発行から30日かつ発行した年のうちだけ有効で、輸入から30日以内に外国貿易局へ報告します。割り当てられた量をまったく使わなかったときは期間内に返還を申告し、申告しないと翌年は申請できません。割当量の95%以上を使わなかった場合も、翌年の割当にペナルティーが課されます。
VAT 7%
輸入品の付加価値税(VAT)は、CIF価格(商品代・保険料・運賃の合計)と関税の合計にかかります。タイ歳入局は、税率を7%に下げている期間を2027年9月30日まで延ばしました。2026年10月1日からの1年間で、根拠は2026年8月23日に官報に載った勅令第807号です。
ジェトロは、乾燥など食品を保存するための工程だけを経た無添加の茶はVATの対象外としています。抹茶は蒸して乾かし、挽いて粉にするため、これに当たるかは通関業者を通して歳入局の扱いを確かめます。通関の手数料は200バーツ、申告の入力を頼む場合は100バーツです(ジェトロ、2024年10月時点)。
品質の基準:残留農薬・鉛・タイ語ラベル
タイの基準は日本と違うため、日本の基準で判定した検査結果だけでは、タイで売れるかは分かりません。残留農薬・重金属・ラベルに、それぞれ保健省の告示があります。
残留農薬
残留農薬の基準は、保健省告示第387号(2017年)と、その後の改正(2024年の第449号まで)で決まっています。ジェトロの調査では、告示の付表に茶の基準値があればそれを、なければ国際規格のコーデックスの値を超えてはならず、どちらにもない農薬は原則として1kgあたり0.01mgまでです。パラコートやクロルピリホスなど製造・所持が禁じられた農薬は、検出されてはいけません。国ごとの基準値の比べ方は抹茶を卸で仕入れる方法にまとめています。
鉛
タイの保健省告示第414号は、茶とハーブティーの鉛を飲む状態で1kgあたり0.5mgまでとしています。粉の状態での見方は抹茶に鉛は含まれるのかにあります。
タイ語ラベル
店頭で売る袋や缶は、保健省告示第450号(2024年7月19日施行)に従ってタイ語で表示し、食品登録番号を入れます。ジェトロによると、施行前に番号を取った食品の旧ラベルが使えたのは2026年7月18日までです。表示項目は抹茶のプライベートブランド・OEMにあります。
サンプルと、暑い国での保管
食品法の省令第3号では、食品登録のためのサンプルを輸入する場合、販売用の輸入許可ではなく専用の様式(Orr.16)で許可を申請します。
試飲用サンプルの扱いは公的な資料で確認できなかったため、許可を持たない店は輸入業者に受け取り方を確かめます。抹茶は熱と湿気で色と香りが落ちるため、輸送中も冷暗所に置けるかを確かめます。開封後の保管は抹茶の賞味期限と保存方法にあります。
輸入の流れとつまずきやすい点
初めての輸入は、会社の準備から販売まで9つの段階に分かれます。割当の申請は年3回しか受け付けないため、出荷の時期から逆算します。
| 順番 | やること | 窓口 |
|---|---|---|
| 1 | タイで会社を登記し、輸入施設と保管施設を用意する | 輸入する会社 |
| 2 | 電子申請システムの使用許可を取り、食品輸入許可(อ.7)を取る | タイFDA |
| 3 | 仕入れ先からGMP証明書(翻訳と証明つき)を受け取る | 仕入れ先 |
| 4 | 抹茶ごとに食品登録番号を取る(Sor.Bor.7) | タイFDA |
| 5 | 関税割当を申請し、関税の権利の証明書を取る | 商務省外国貿易局 |
| 6 | 日本で植物検疫証明書と特定原産地証明書を出してもらう | 仕入れ先・輸出者 |
| 7 | 植物の輸入申告をし、受理番号(P.Q.5)を取る | タイ農業局 |
| 8 | 輸入申告をし、関税とVATを払い、検査があれば受ける | タイ関税局 |
| 9 | 店頭販売用にはタイ語ラベルを付けてから売る | 輸入する会社 |
ジェトロの調査では、茶の販売に別の許可は要りません。つまずきやすいのは、割当の申請期間を過ぎて枠外の90%になること、特定原産地証明書を付け忘れてJTEPAの免除を使えないこと、残留農薬の結果が日本の基準でしか判定されていないことです。
許可がない店が抹茶を仕入れる方法
自社で輸入許可を取らない場合は、タイFDAの輸入許可と割当を持つ輸入業者を通して仕入れます。輸入業者が自社の許可と登録番号で輸入し、通関と関税・VATの支払いを引き受けます。
日本から直接仕入れる場合、DAP(関税と税を受け取る側が払う輸送条件)なら、見積もりに関税とVATを足して比べます。シンガポールとの違いはシンガポールに抹茶を輸入するには、ラテに向く等級は抹茶のグレードにあります。
Omakase Matchaから仕入れる場合
Omakase Matchaは、宇治・八女・鹿児島・静岡・宮崎の産地から直接仕入れた抹茶を、1kgから卸しています。タイへは、受け取るときに関税と税をお店で払っていただくDAPで届けます。支払いはWiseまたはPayPalでの前払いで、タイのお店には訪問もしています。
注文前に味を確かめたい場合は、3種類までサンプル請求ができます。条件はタイ向け卸と取引方法、書類の考え方は品質・書類のページにあります。
参考にした情報
確認日:2026年10月16日
- タイ保健省告示第196号(B.E.2543)「茶」(改正込み版) https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=510362387866591232&name=Compi_196.pdf
- タイ保健省告示第196号「茶」英訳(非公式) https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=509295897201483776&name=No.196-43Tea.pdf
- タイ食品医薬品局「ชา(茶)」法令ページ https://food.fda.moph.go.th/food-law/f2-tea
- タイ食品医薬品局規則「食品登録番号の手続き」(B.E.2567) https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=654871674310762496&name=fda-regulation-67.pdf
- タイ食品医薬品局規則「食品登録番号の手続き(第2版)」(B.E.2569) https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=871948728154595328&name=fda-regulation-69-2.pdf
- 食品法の省令第2号(1979年)英訳 https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=509455992002584576&name=E_No.02.pdf
- 食品法の省令第3号(1979年)英訳 https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=509456250468179968&name=E_No.03.pdf
- タイ保健省告示第414号(B.E.2563)「汚染物質を含む食品の基準」英訳(非公式) https://food.fda.moph.go.th/media.php?id=509427551085666304&name=P414_E.pdf
- タイ歳入局 プレスリリース18/2569「VAT 7%の期間を2027年9月30日まで延長」 https://www.rd.go.th/fileadmin/user_upload/news/2569thai/news18_2569.pdf
- タイ歳入局 勅令第807号(B.E.2569) https://www.rd.go.th/fileadmin/user_upload/kormor/newlaw/dc807.pdf
- ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(タイ)」(調査時点2024年10月) https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/foods/exportguide/greentea.html
- 農林水産省「諸外国における残留農薬基準値に関する情報」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/zannou_kisei.html
























































































